研究課題/領域番号 |
20K07715
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
林 勇一郎 関西医科大学, 医学部, 博士研究員 (90378737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 記憶 / 空間記憶 / 長期記憶 / カルシウムイメージング / 顕微鏡 / 前頭前野 |
研究実績の概要 |
本研究では、前頭前皮質の情報表現の長期安定性について、実験動物としてマウスを用いカルシウムイメージングによる神経活動計測を用いて研究を行う。これを実現するため、大規模・高効率な神経活動イメージングを可能にする3次元イメージング法の開発、神経細胞の投射先を区別しながら同時イメージングを行うための2波長イメージング法の開発も同時に行う。 後者の技術開発に関して、今年度は3次元イメージングにより得られた画像データから個々のニューロンの活動を抽出するソフトウェアの開発を行った。本研究で用いる落射蛍光顕微鏡法はバックグラウンド蛍光が多く、広く使われている手法であるCNMFではうまく神経活動が抽出できない。一方、落射蛍光顕微鏡で得られる画像に適したCNMFeは3次元画像を処理することができない。そこで、落射蛍光顕微鏡による3次元イメージング画像に適した神経活動抽出法を開発した。本手法は、CNMFの前処理として生の3次元データに対し適切な空間ハイパスフィルタを掛けるものである。これにより落射蛍光画像に特有のバックグラウンド蛍光を効果的に除去することができた。 技術開発と並行して、場所-報酬連合学習中のマウス前頭前皮質からの神経活動記録を行った。35x45cmの長方形プラットフォーム内に10x10cmのゴールゾーンを設定し、マウスがゴールゾーンに1秒以上滞在するとエサ(チョコレート)を与えるようにした。1日1回450秒間のタスクを行い、実験開始からタスクに習熟(10ゴール以上)するまでの間の神経活動を継続的に記録した。現在、複数のマウスについて上記の実験を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イメージング手法に関しては、新しいデータ処理手法を開発し従来より効率よく3次元データから神経活動を抽出することに成功した。この成果は学会発表(第44回日本神経科学大会)を行った。一方、2波長計測に関しては、2波長分の光学系が必要なため顕微鏡の重量が重くなること、赤色カルシウムセンサーの励起に必要な光量を得るためLEDの発熱が大きく、それを処理することが困難である、という2つの問題が解決できていない。 学習中のマウス前頭前皮質からの神経活動記録に関しては、今年度より実験を開始しデータ取得を行えている。ただし問題点として、以前同種の実験を行った際(Hayashi et al., 2016 Neurosci Res 106 70)と比較して成績(時間当たりゴール数)が全般的に低い。以前の実験では神経活動記録は行っていなかったのに対し、今回は顕微鏡を装着しケーブルに繋がれた状態でタスクを行わせている。そのため、動物に負荷がかかり動きが鈍くなっている可能性が考えらえる。 以上の成果と課題を総合し、計画年数内に十分な成果が得られると判断して「おおむね順調」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2波長イメージングについては、励起光の光量を十分に高めるため、外部の光源から光ファイバーを用いて顕微鏡に導光する。これにより顕微鏡の光学系が簡素化されるので軽量化も期待できる。 神経活動記録実験に関しては、顕微鏡の軽量化、ケーブルの細径化を行い、動物の活動量の上昇・成績向上が見られるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の流行状況を鑑み、学会発表をリモート参加としたため旅費を使用しなかった。また、論文発表を年度内に行えなかったため論文掲載費を使用しなかった。次年度も学会発表を予定しているが、引き続きCOVID-19の流行状況に応じて現地発表かリモート発表かを判断する。論文発表は次年度に行うことを予定している。
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