本研究では、前頭前皮質の情報表現の長期安定性について、実験動物としてマウスを用いカルシウムイメージングによる神経活動計測を用いて研究を行う。これを実現するため、大規模・高効率な神経活動イメージングを可能にする3次元イメージング法の開発、神経細胞の投射先を区別しながら同時イメージングを行うための2波長イメージング法の開発も同時に行う。 これまでに、落射蛍光顕微鏡による3次元イメージングデータに適した神経活動抽出法を開発した(2021年日本神経科学学会にて報告)。また、2波長イメージングを行える超小型蛍光顕微鏡を試作した。 2022年度は前年に引き続き、行動中のマウスの前頭前皮質からの神経活動記録を行った。マウスにplace preference task(35x45cmの長方形プラットフォーム内に10x10cmのゴールゾーンを設定し、マウスがゴールゾーンに1秒以上滞在するとエサが与えられる)を行わせ、実験開始からタスクに習熟(450秒間のセッション中に10ゴール以上)するまでの間の神経活動を継続的に記録した。本タスクは特定の空間環境内における局所(ゴールゾーン等)の情報表現を探るものだが、別のタスクとして、複数の空間環境が前頭前皮質においてどう表現されているかを調べるため、マウスに4つの異なる空間環境を経験させ、それぞれの環境での活動時の前頭前皮質の神経活動を記録した。そして空間情報処理に重要な役割を担う海馬での空間情報表現と比較し、どのような違いがあるかを比較検討した。
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