研究課題/領域番号 |
20K07717
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 祥夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (60321907)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 分子プローブ / 神経伝達物質 / センサー / 光電流 |
研究実績の概要 |
令和5年度は、昨年度に引き続き神経伝達物質を特異的に検出するための蛍光分子プローブ設計・合成および性能評価および開発した試薬の医療診断の適応の可能性について検討した。蛍光分子プローブの蛍光発色団は、ドーパミン認識部位としてイミノ二酢酸-鉄錯体を採用した。また蛍光発色団については、標的物質(ドーパミン)との反応前後において蛍光強度が大きく変化することと、色素増感太陽電池としての機能があり、かつ励起波長が600~700nmであることの観点からシアニン骨格を採用した。これらの蛍光分子プローブが、それぞれ目的とする神経伝達物質を特異的に認識するかどうかを、生きたラットの脳組織を用いて確認した。具体的には、開発したプローブで脳組織を染色後、ドーパミン放出神経細胞が存在する腹側被蓋野(ventral tegmental area, ventral tegmentum、VTA)を電気刺激することによって、強制的な神経伝達物質の放出を試みた結果、電気刺激の応答に対応した蛍光強度の増加が観察されたことによって、in vivoイメージング証明することができた。さらに、光電流計測用の微小電極の表面に上記蛍光色素を修飾し、ドーパミンに対する応答を確認したところ、ドーパミンの濃度の変化に対応した蛍光色素から生じる光電流の応答を確認することが出来た。また、上記in vivoイメージング測定の再現性も確認することが出来た。さらに、より高感度測定が期待できる蛍光分子プローブの分子設計・合成が終了した。次年度はこの蛍光分子プローブを用いたin vivoイメージング測定を推進する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、合成が終了し、in vitroの系において神経伝達物質を高感度かつ高選択的に認識することが出来た化合物を用いて、生きたラットの脳組織におけるin vivoイメージング測定の再現性、原理確認を実証することが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、新たに開発した蛍光分子プローブを用いたin vivoイメージング測定の詳細な実験を行い、医療診断への適応について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、実験に必要な試薬類、備品類の納期遅延が生じたこと、さらに海外での学会がオンライン開催になったため、予定していた海外出張が中止となったことから、次年度使用額が生じた。今年度の早い時期での納品の目途が立っていること、さらに国際会議の現地開催が決定しており、年度内の予算の執行が可能である。
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