研究課題/領域番号 |
20K07719
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷川 千秋 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 協力研究員 (40644034)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳磁図 / 自閉スペクトラム症 / 母子インタラクション / 表情解析 / 脳内ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自閉スペクトラム症(ASD)児に特異的な対人交流特性を脳生理学的指標から捉えることである。世界唯一の、小児・成人用脳磁図(MEG)同時計測システムを用いて、親子の自然な交流場面の脳活動を測定し、非線形理論やネットワーク理論に基づく最先端の解析アルゴリズムにより2者インタラクション場面の脳内神経ネットワークの理解を目指す。非侵襲的で静音性に優れたMEGを用いた計測により、自制が長時間保てない乳幼児や感覚過敏のあるASD児でも自然な状態で検査が可能となる。予備実験のサンプルデータから実験プロトコルの実行可能性を確認し、複雑性を指標としてASD児と定型発達(TD)児の比較検討を始めている。この研究は、ASDにおける実践的な生物学的指標の確立、乳幼児期における早期診断、さらにはコミュニケーション支援システムの構築に大きく貢献すると考えられ、臨床応用の可能性も大きい。 これまでに取得したデータを用いて、ASD幼児と定型発達幼児の比較研究を行っている。ASD幼児20名と定型発達幼児25名の、親子見つめ合い場面の脳活動を比較したところ、Right fusiform gyrusとRight superior temporal sulcusの領域における視覚性のガンマ活動(61-90Hz)がASD群で有意に低下していることがわかった。本年度の成果としては、この解析結果を国際学術雑誌に投稿中し、リバイス作業を行った(現在も査読継続中)。加えて母子データの相互性を評価する解析を進めている。見つめ合い課題の母子データが揃っているデータセット(ASD群16組、定型発達群18組)を用いて、母子の脳間インタラクションを評価に取り組んでいる。本年度は、アーチファクトを除いた母子データの使用可能データの時間軸を揃え、ネットワーク解析に先立つ周波数解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MEG実験の実施に関しては、これまでに取得したデータに加えて新たに自閉スペクトラム症群、定型発達群の追加のデータ取得を行う予定であったが、2019年の国際的なヘリウム不足の影響を受けて、MEG実験が規模縮小をせざるを得ない状況になり、2020年に母子データを取得することが困難であった。そして2019年度の年度末(2020年3月)以降、現在に至るまでは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、大学やMEG機器のある研究施設への立ち入りができず、対面を伴う実験への参加者募集を含めた実験の遂行が中断している。 現在、追加データ取得のための実験再開へ向けて準備を進めている状況である。しかし、これまでの長期間実験が中断し、実験体制の再構築のための人的コストがかかること、感染症等の状況次第では、幼児を対象とした研究の遂行が倫理的な問題から困難であることから、最終年度もこれまでに収集したデータ解析を中心に研究を進める。 研究成果としては、すでに取得済みのMEGデータを用いて、ASD児に特徴的な視覚性ガンマ活動に関して解析を行い、論文を投稿することができた。令和2年度には査読に対する修正を加えた原稿を再投稿した。並行して、母子データの相互性を評価する解析を進めている。見つめ合い課題の母子データが揃っているデータセット(ASD群16組、定型発達群18組)を用いて、母子の脳間インタラクションの評価を目指す。本年度は、アーチファクトを除いた母子データの使用可能データの時間軸を揃え、ネットワーク解析に先立つ周波数解析を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も取得済みのMEGデータを用いて継続して解析を進める。すでに小児データに焦点をあてて自閉スペクトラム症群と定型発達群の視覚性ガンマ活動の比較を行ったが、今後は母データを合わせて解析する。母子の脳間ネットワークを評価する指標を、グラフ理論を用いて検討し論文化を目指す。また、行動指標として課題遂行時の表情解析を行い、脳内ネットワークの解析と合わせて群間の比較検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では、MEG実験の実験参加者への謝金を計上していたが、2019年度の年度末(2020年3月)以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、大学やMEG機器のある研究施設への立ち入りができず、対面を伴う実験への参加者募集を含めた実験の遂行が中断したため、人件費・謝金の支出がなかった。また、同じく新型コロナウイルス感染症の影響により、日本国内・国外への出張を行うことができなかったため、旅費の支出がなかった。 在宅ワークの増加により、環境構築としてPC関連機器、データ保管用のHDD、NASを購入したため、物品費が当初の計画額を上回った。次年度も出張や実験の謝金としての支出は低いと予想されるため、英文校正費用や出版費用、データ解析補助の謝金などで予算を使用する予定である。
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