研究課題/領域番号 |
20K07722
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
楊 家家 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 助教 (30601588)
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研究分担者 |
福永 雅喜 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 准教授 (40330047)
山本 洋紀 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (10332727)
呉 景龍 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 教授 (30294648)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レイヤーfMRI / ヒト脳皮質層別の活動 / 視触覚クロスモーダル |
研究実績の概要 |
ヒトの対象認知過程は,多感覚情報の知覚,学習,記憶など脳の高次機能が総合されるもので,感覚種をまたがるクロスモーダルな性質を持つ。近年,機能的磁気共鳴画像(fMRI)技術の発達により,マクロ観点からクロスモーダルな情報処理に関わるヒトの後頭頂皮質と低次感覚皮質間の相互作用への理解が進めてきた。しかし,ミクロな脳機能素子となる皮質層がどのように情報処理を行うことによって,クロスモーダルな情報処理機能を実現しているかは未だ謎である。本研究では,最新の7テスラ超高磁場fMRI(レイヤーfMRI)技術を駆使して,一次感覚皮質と後頭頂皮質の各層における視触覚クロスモーダルな情報処理機構の解明を目指している。この目標を達成するために,2020年度は当初計画した視覚と触覚実験刺激の選定・作製および視触覚クロスモーダルな対象識別に関する認知心理学実験を実施した。またレイヤーfMRI実験用の撮像シーケンスのインストールとシーケンスの検証実験も実施でき,今後の研究推進に有意義な知見が得られ,レイヤーfMRI実験の準備ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度では,視覚と触覚実験刺激の選定・作製および視触覚クロスモーダルな対象識別特性を解明するための認知心理学実験の実施を中心的に進めてきた。本研究では,様々な材質と形状の物を「触ってから見る」と「見てから触る」の視触覚クロスモーダルな対象マッチングfMRI実験を行うことを計画している。そのために,視覚と触覚に共通の対象材質と形状パラメーターの選定が必要である。またfMRIは常に高磁場を発生しており,刺激の素材は無磁性であることが求められる。申請者は,以上の条件を満たすために,これまでの研究で用いた対象のローカル(表面粗さ)とグローバル(全体の形状)パラメーターを同時に変更するアプローチをとり,3Dプリンターによる触覚刺激を作製した。また,視覚刺激は,触覚刺激と同様な対象のローカルとグローバルパラメーターを用いたものとした。次に,これらの刺激を用いた視触覚クロスモーダルな対象識別に関する認知心理学実験を実施した。さらに,レイヤーfMRI実験用の撮像シーケンスをインストールし,シーケンスの検証実験を実施できた。前述のように,おおよそ予定している成果が得られたため,本研究課題は概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,まず前述の視覚と触覚刺激を用いて,全脳における一次体性感覚皮質・一次視覚皮質・後頭頂皮質の同定fMRI実験を実施する予定である。その結果に基づいて「視覚単独」および「触覚単独」タスクのそれぞれに対して後頭頂皮質(頭頂間溝,上頭頂小葉と下頭頂小葉)の活動特徴を検討する。次に,レイヤーfMRI撮像シークエンスを調整し,一次感覚皮質と後頭頂皮質の各層活動を検討するための予備実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は,年度はじめから新型コロナウイルス感染拡大に伴う移動制限により予定していた国内・国際学会の参加ができなかったため,当初の計画より出費は少なかった。これらの経費は,2021年度の研究活動に有効活用する予定である。
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