研究課題/領域番号 |
20K07725
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
橋本 龍一郎 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (00585838)
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研究分担者 |
太田 晴久 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (00439366)
板橋 貴史 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 講師 (70636943)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発達性吃音 / 神経発達障害 / 発話 |
研究実績の概要 |
MRIデータの収集環境を整備し、拡散MRI・安静時fMRI・構造MRIについて、撮像プロトコルを策定した。また、遅延聴覚フィードバックを含む発話行動研究の研究プロトコルを策定し、実験システムを構築した。さらに、中枢性聴覚機能評価のための行動検査バッテリーを選定した。ASDと発達性吃音の聴覚機能に関して、先行研究のレビューをおこない、これらの臨床群に関連性が強い中枢性聴覚機能検査として、時間解像度、時間的統合機能、選択的聴覚注意に注目し、これらの機能を所定実験時間内に評価する適切な行動研究プロトコルを策定した。これにより、研究プロトコルの策定を完了し、研究倫理審査委員会(IRB)の承認を受けた。 また、成人自閉スペクトラム症の運動性言語野の機能を調べるため、音響的劣化条件下における音声知覚課題時の脳活動を測定するfMRI研究を実施した。自閉スペクトラム症群とコントロール群の脳活動を比較したところ、外側および内側の前頭前野における脳活動に関して、自閉スペクトラム症群において有意な増加を認めた。音響的劣化条件下における音声知覚の成績に有意差はなかったことから、この結果は、 自閉スペクトラム症群における補完的な活動を反映していると推察された。また、発話運動関連領域の一つである左半球背側運動前野と下頭頂回の間の機能的結合の低下を認めた。また、自己記入式質問紙の評価による自閉的特性の程度と機能的結合の異常の間に有意な相関を認めた。これらの結果を論文化し、国際専門誌に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナ感染症のため、人を対象とした実験データの収集が不可能な時期があった。また、発話を伴う研究であるため、研究プロトコルの策定において、通常の行動研究よりも慎重な配慮が必要とされたため。
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今後の研究の推進方策 |
特に発話を伴う行動研究を実施するにあたって、感染症防止に留意しながら、データ収集を進めていく。感染状況によっては、2つの行動研究(発話検査と聴覚機能検査)のうち、前者の研究時間を短縮し、後者について重点的にデータを収集するようなど、柔軟な対策をとりたいと考えている。また、MRIについても、実験時間の短縮のために収集するMRIデータの種類を調整することで、データ収集を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、予定していた学会への出張がキャンセルされ、実験協力者・データ収集のアルバイトの謝金等に予定していた人件費が執行できなかったため。今後は、感染症の状況を考慮しつつ、データ収集を進め、適宜アルバイトを雇用することで、人件費の執行を進めていく。さらに、行動研究用の実験機材等を導入することで、効率的な行動研究を実施する研究環境の整備を推進する。
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