本研究は大規模オープンリソースと独自に収集した実験データを統合的に解析するフレームワークにより,ヒト非侵襲脳計測実験で新しい仮説をテストしながら,信頼性と一般性を確保することを目的とする.本年度は,昨年度にデータ収集を始めたデータを継続して収集し,完了させたのち,データ解析を行った.データ解析の結果,異時的意思決定における,選択肢間の主観的価値の差(決定の難度)は,難度が高い(種間的価値の差が小さい)ときほど前頭前野の活動が大きくなることが示された.そして,その領域の活動の難度効果は,作業記憶課題の活動が大きい被験者ほど大きくなることが示された.これらの結果は,昨年度の結果を拡張して,過去の研究(Jimura et al. Cereb Cortex 2018)を再現している.そして,収集した作業記憶課題の脳活動データは,Human Connectome Project (HCP)による脳活動ビッグデータと一致していることを確かめた.以上の結果から,機械学習の手法を用いて,オリジナルデータとビッグデータの統合的な解析に着手した.過去の研究(Tsumura et al. Cereb Cortex 2022)の枠組みを用いて,脳活動画像から行動状況・特徴を予測する予測した.予測器の訓練にはHCPによる脳画像・行動のビッグデータを用いた.そして,オリジナルデータの脳活動画像から行動の予測を行った.訓練では,脳活動画像と行動特徴の組み合わせによって,予測精度が変わることがわかった.また,機能的MRIのスキャンパラメータの差異はそれほど大きな効果がないことがわかった.
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