研究実績の概要 |
研究代表者はこれまで,共同注意やみつめあいといった注意共有(視線を介して注意を他者と共有する共同作業)の神経基盤を検討してきた.これまでの研究は,右島皮質/下前頭回がみつめあい(Koike et al., 2019)や共同注意(Koike et al., 2020)の基盤であることを明らかにした.しかし日常生活で注意共有が果たす役割を考えると,これまでの先行研究の手法では,その神経基盤の全貌を解明するのには大きな問題がある.その問題点とは,実験室環境では注意共有が課題におけるゴールになっていることである.実社会では,同じものに注意を向けてコミュニケーションが終了することはない.あくまでそれは,その後に続くより複雑なコミュニケーションの起始点である.つまりこれまでの手法では,(1)みつめあいとその後に続く共同注意の関係,(2)注意共有がその後に続くコミュニケーションや社会的意思決定に与える影響を解明できない.2021年度は,上記(1)を解明するための実験を,生理学研究所のCOVID-19対応マニュアルに沿った形で継続しておこなった.二者は別々のMRI装置に入るが、MRI対応カメラを介してビデオチャットのように相手の顔映像を リアルタイムで見ながら,共同注意課題をおこなう.一般的な共同注意課題(Koike et al., 2019など)とは異なり,本実験では,二者は視線をそらした状態から課題 をスタートする.その後,画面上に呈示されるキューに従い,みつめあい→共同注意と注意共有の状態が進んでいく.ここで,みつめあいと共同注意を分離可能な実験デザインを組むことによって,連続して起こるこれら2種の注意共有の神経基盤を独立して描出可能である.
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