研究課題/領域番号 |
20K07732
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
丹羽 康貴 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (40590071)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 前脳基底部 / Ntrk1 |
研究実績の概要 |
私たちの行動は外界からの情報や以前の経験によって常に左右される。ものを避けるといった瞬発的な行動から、寝不足や長時間の集中による頭の疲れなど、さまざまな時間幅での覚醒制御機構が予想される。そこで本研究では覚醒制御における時間~日レベルのゆっくりとした情報処理・応答が、覚醒を支える神経回路においてどのように実装されているのかを明らかにすることを目的とする。特に、覚醒制御に重要であることが知られている前脳基底部アセチルコリン神経に注目し、その細胞内分子シグナルを遺伝学的に操作することによって、睡眠覚醒行動に影響を与える分子シグナルを明らかにする。今年度は尾静脈からPHP.eB型のアデノ随伴ウイルス(AAV)を導入することで、前脳基底部アセチルコリン神経を阻害し、トランスジェニックマウスによる阻害と同様の睡眠覚醒異常(Niwa et al. 2018)が再現されるかを検証した。具体的にはCre依存的に破傷風毒の発現が誘導されるコンストラクトおよびAAVを作製した。このAAVを前脳基底部アセチルコリン神経にCreの発現が見られるNtrk1-IRES-Creマウスの尾静脈から導入し、その睡眠覚醒行動を調べた。その結果、トランスジェニックマウスによる阻害で見られたような暗期の覚醒時間が増える傾向は見られたが、コントロールとの差は統計学的に有意ではなかった。この原因として、前脳基底部での感染効率がそれほど高くないことが考えられる。そこで、前脳基底部アセチルコリン神経やその投射領域へ直接インジェクションすることで、感染効率を上げて、行動学的な変化が見られないかを検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前脳基底部アセチルコリン神経におけるNtrk1シグナル関連分子の過剰発現マウスを作製し検証するための予備実験として、Cre依存的に破傷風毒の発現が誘導されるコンストラクトを作製し、尾静脈から導入することで70%程度の感染が可能なPHP.eB型のアデノ随伴ウイルス(AAV)を作製した。このAAVを前脳基底部アセチルコリン神経にCreの発現が見られるNtrk1-IRES-Creマウスの尾静脈から導入し、前脳基底部アセチルコリン神経の阻害を試みた。それらのマウスの脳波筋電図を測定し、睡眠覚醒行動を調べたところ、暗期の覚醒時間が増える傾向は見られたが、コントロールとの差は統計学的に有意ではなかった。
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今後の研究の推進方策 |
尾静脈からのAAV導入による前脳基底部アセチルコリン神経阻害では、トランスジェニックマウスによる阻害に比べて睡眠覚醒行動に与える影響が弱かった。この原因として、前脳基底部での感染効率がそれほど高くないことが考えられる。そこで、前脳基底部アセチルコリン神経やその投射領域へ直接インジェクションすることで、感染効率を上げて、行動学的な変化が見られないかを検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度について、コロナ禍による学会のオンライン開催に伴い、旅費の支出が不要となった。また、複数のプロジェクトに共通する作業について業務の効率化をはかることで、本研究費で見積もっていた人件費を大幅に削減することが可能になった。次年度では複数あったプロジェクトの終了に伴い、本研究費からの全額支出が必要となる人件費に使用する予定である。
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