研究課題/領域番号 |
20K07734
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
澁木 克栄 新潟大学, 脳研究所, 非常勤講師 (40146163)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 視野検査法 / 視覚野 / 同名半盲 / 眼球運動 / 視線チェック |
研究実績の概要 |
片側の視覚野が障害されると反対側の視野が障害される同名半盲が生じる。我々は、同名半盲が、簡単な視覚刺激の提示によって回復した症例を経験した。しかし、通常の視野検査法は、同名半盲の機能的変化の解析には適していない。そこで本研究では、患者に様々な視覚刺激を提示して視野検査を行うPCプログラムを開発した。同名半盲患者でも中心視野は保たれ、この部分において最も高い視力を有する。従って被検者に画面の小さな注視点を見るように指示し、視覚刺激を提示するタイミングで注視点の形状をわずかに変化させた。被検者は注視点の形状変化を捉えた場合、注視点を見ていたと判断した。注視点の形状変化のみで、視野に何も視覚刺激を提示しなかった場合に「刺激なし」と答えさせる課題を視線チェック課題とした。視線チェック課題において正答率が高かった場合、それ以外の課題の結果も有効と判定した。我々は4人の健常被検者と1名の同名半盲患者を用いてこのPCプログラムの有効性を評価した。この患者はゴールドマン視野計では左視野の機能が障害されているが、日常生活においては欠損に気づいておらず、不便を感じていなかった。患者は視線チェック課題を用いた検査では同名半盲を示したが、注視チェック課題を省略した場合は障害側視野に提示された視覚刺激を検出できた。患者の視線の動きをチェックすると、注視チェック課題なしの場合は左視野を走査するように視線を動かしていた。しかし注視チェック課題を用いると、視線の動きは大幅に制限された。即ち、この患者の視覚欠損は、視覚情報処理と協調した自発的眼球運動により日常生活で補償されていると結論した。このような自発的眼球運動と視覚情報処理の間の協調を獲得することは、視覚機能を回復するための治療戦略となるかも知れない。また、今回得られた結果は、視線チェック課題を用いた本研究のPCプログラムの有用性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記した内容は、Frontiers in Neurologyという学術雑誌に「Visual field test with gaze check tasks: application in a homonymous hemianopic patient unaware of the visual defects」というタイトルの研究論文として受理され、近日中に発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
医療用ゲームは、同名半盲だけでなく、例えば認知症のような非常に患者数の多い疾患にも有効と思われる。従って、今後医療用ゲームを用いた認知症の診断や治療の可能性についても、研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度中に支出する予定だった出張費用が、学会のWEB開催のため不要となった。また令和2年度中に計画していた論文出版費用が、論文の受理が遅れたため、不要となった。論文出版費用相当分は、論文が既に受理されたので、速やかに支出する予定である。令和3年度における学会の開催状況は、新型コロナ感染症のため、現時点では未定である。もし出張費用が不要になった場合は、物品費として支出する予定である。
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