研究課題/領域番号 |
20K07745
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
川村 将仁 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (10408388)
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研究分担者 |
西 晴久 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70256428)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ketogenic diet / 小児てんかん / 抗けいれん作用 |
研究実績の概要 |
ケトン食療法は、低炭水化物・高脂肪食により血中のケトン体を増加させ、擬似絶食状態を引き起こす、小児てんかんに効果がある食事療法である。近年、ケトン食療法が薬剤耐性てんかんにも効果を有することが報告され、その使用が再度着目されている。しかし、ケトン食療法にも短所が存在する。短所の一つとして、その効果が発現するまでに食事療法を開始してから時間がかかることが挙げられる。ケトン食療法を適切に、また患者さんの苦痛をできるだけ少なく施行するために、その治療効果が発現するまでの時間を短縮することは、我々が考えるべき優先事項の一つである。本研究では、ケトン食療法の効果発現までの時間が長い理由を解明することを目的としている。そのため、絶食およびケトン食療法をラットに施行することにより、抗けいれん作用、血中・脳脊髄液中ケトン体濃度およびグルコース濃度が、経時的にいかに変化するのかを観察していく。これまでの研究において、(1)絶食施行ラットを用いた研究において、18時間以上の絶食を施行しなければ抗けいれん作用および脳脊髄液のケトン体濃度の上昇が発現しないこと、(2)血液‐脳-関門培養細胞モデルを用いた研究において、ケトン体の中枢移行はケトン体を透過する輸送体の一種であるMCT1の阻害薬およびsiRNAを用いたノックダウンにより有意に抑制されることが明らかになっている。2022年度の研究では、ラットへのケトン食療法施行期間による抗けいれん作用の比較実験を行った。ラットへの7日間のケトン食療法施行にて発現する抗けいれん作用は、1日間、2日間、3日間の施行では発現しなかった。また、7日間施行にて上昇した脳脊髄液のケトン体濃度は、1日間、2日間、3日間の施行では上昇しなかった。絶食では18時間にて発現する抗けいれん作用を発現するためには、ケトン食療法では4日間以上の長期施行が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度はケトン食療法施行1日、2日、3日、7日間における、抗けいれん作用、血中・脳脊髄液中ケトン体濃度およびグルコース濃度の経時的変化を観察した。また、例数が不足しており、統計学的検討が行えていないが、血液-脳-関門モデルでのケトン体移行性に対する血中側のグルコース濃度の変化の影響について研究を施行した。しかしながら、2020年度に新型コロナ感染症に対する緊急事態宣言により動物実験を施行できない期間の影響もあり、当初予定していた、ケトン食療法施行4日、5日、6日間の実験を行えておらず、また血液-脳-関門モデルの事件の例数追加も必要であり、全体として研究計画はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までに施行しているケトン食療法施行1日、2日、3日、7日間に追加して、ケトン食療法4日、5日、6日間(必要により8日、9日間)における、抗けいれん作用、血中・脳脊髄液中ケトン体濃度およびグルコース濃度の経時的変化を追加・観察していく。また、2022年度まで施行してきた、血液-脳-関門モデルの研究において、ケトン体の中枢への透過係数が修飾される因子について、血中側のグルコース濃度の変化による影響について実験例数を増やし観察していく。上記により、ケトン食療法での抗けいれん作用発現までの時間的な違いを多角的に検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度において、新型コロナ感染症に対する緊急事態宣言により動物実験を実施できない期間があったため、当初使用予定より少なかった物品購入費が2022年度まで繰り越されている。これらの次年度使用額は、今後の研究進展による当初予定のケトン食療法施行動物実験および血液-脳-関門モデル実験の物品購入費にて2023年度に使用予定である。
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