これまで痛み刺激としてホルマリンテストを行い、一度痛みが抑制される時期に性差が認められること、その時期に分界条床核外側部で雌性特異的にCREBのリン酸化が起こることを明らかにした。また、同部位はCRHニューロンが局在している特異的な場所でもある。 本研究の目的は、分界条床核外側部のCRHニューロンが、痛み行動の性差発現にどのような役割を演じているか、を検討することにあり、遺伝子改変動物とウィルスベクターを組み合わせて利用し、オプトジェネティクスやTRECKの変法などの神経細胞に選択的な操作技術を用いる。 本研究ではCRH-Creラット(RRRC#00852)を使用し、分界条床核外側部におけるCRHニューロンを選択的に操作することにより、ホルマリンテスト行動への変容について検討した。 ラットの分界条床核外側部に脳定位固定装置を用いて、AAV-EF1a-DIO- hChR2(C128s/D156A)-EYFP 、AAV-EF1a-DIO-eNpHR3.0-EYFP を投与し、同時に、光ファイバーの先端を固定し、手術1ヶ月後、ホルマリンテストを行い、光ファイバーの先端から特定波長の光を照射しCRHニューロンを興奮、もしくは抑制させ、行動の変化を観察する予定であった。しかし、使用したウィルスの発光力が弱く感染した細胞がCRHニューロンであるかどうかの同定が難しくなった。そのため、使用するウィルスのセロタイプなどを再検討したが、実験に耐えうるウィルスの発見は困難であった。そのため、感染した細胞に対してYFP抗体を用いて免疫染色を行なったところ、充分な発光量が認められた。そこで、感染した細胞へのYFP抗体を用いた免疫染色とその細胞がCRHニューロンであるかの同定(In situ hybridization法)を行ったが同時検出は非常に難しく、実験方法の検討に時間を要し2023年度が終了した。
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