研究課題/領域番号 |
20K07750
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
宮野 加奈子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (50597888)
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研究分担者 |
上園 保仁 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20213340)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 神経障害性疼痛 |
研究実績の概要 |
がん患者の7-8割はその過程で疼痛を経験するが、既存の鎮痛薬で緩和できないことも少なくなく、新規鎮痛薬の開発が求められている。間葉系幹細胞(MSC)は多分化能を有し、抗炎症作用、神経保護作用など様々な作用があることが報告されており、その臨床応用が世界で注目されている。そこで、本研究では既存の鎮痛薬では制御しにくい疼痛モデル動物を作製し、ヒトMSCの鎮痛効果ならびに鎮痛メカニズムを解析し、MSC臨床応用に向けて必要となる基礎的データの蓄積を目指した。これまでに本研究で、坐骨神経部分結紮(PSNL)神経障害性疼痛モデル動物を作製し、脂肪由来ならびに臍帯由来のMSC (AD-MSC or UC-MSC)尾静脈内投与により鎮痛作用が示されることを明らかにした。 そこで当該年度は、本モデルにおける一次知覚神経細胞が存在する脊髄後根神経節(DRG)および坐骨神経の免疫組織化学染色を行い、MSCの鎮痛メカニズム解析を行った。まず、DRGにおいて、PSNLは神経損傷マーカーATF-3陽性細胞数を有意に増加させ、この陽性細胞にはNeuNが共発現していた。さらに、この上昇は、AD-及びUC-MSCにより有意に減少した。次に、myelin basic protein (MBP)及びA線維のマーカーであるNF200の抗体で坐骨神経を二重染色したところ、sham群においてMBPはNF-200陽性細胞の周りに発現し、PSNLによりMBPが有意に減少していた。この減少はAD-MSC投与により改善傾向を示したが、有意な差ではなかった。一方、UC-MSCはほぼ完全にMBPの減少を改善した。したがって、AD-及びUC-MSCは神経損傷害を改善し、少なくともUC-MSCは坐骨神経の脱髄を改善することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はPSNLモデルを用いたAD-およびUC-MSCの鎮痛メカニズムについて解析を行い、本研究成果をPLoS Oneに発表した。そのため、当該年度の研究計画目標はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令令和4年度は、口腔粘膜炎モデル動物を用いてAD-およびUC-MSCの鎮痛作用をさらに詳細に解析する予定である。さらに、鎮痛作用メカニズムについても免疫組織化学染色などを用いて解析し、本成果を論文にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:令和3年度は自身の異動により、研究費の使用が当初の予定どおりにはいかなかったため。
使用計画:令和4年度は、直接経費の繰り越し分を以下の予算にて研究を遂行する;物品費:950,423円、その他:500,000円。令和4年度の研究費は主に上述した研究推進方策を進めるために必要な消耗品や実験動物などの購入(物品費)、学会参加費および英文校正・論文投稿費(その他費)に充当する予定である。
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