研究課題
部分凝集αシヌクレインを神経細胞内投与すると、神経細胞が高頻度発火するだけで小胞体上のIP3受容体から異常Ca2+遊離を生ずること、この異常Ca2+遊離は、神経細胞内でIP3受容体の開閉を調整するCalcium binding protein 1 (CaBP1)100kD以上の部分凝集αシヌクレインが結合することによって生ずることを細胞電気生理と免疫沈降法によって確かめた。連発発火時の異常Ca2+遊離が続くと、長期的にはミトコンドリアCa2+負荷をもたらす。また、この異常Ca2+遊離によるCa2+恒常性不全は、蛋白恒常性の攪乱やαシヌクレインの凝集促進・細胞間伝搬の誘因にもなる。PDやLBDでは、αシヌクレインオリゴマーが過剰になった神経細胞で、異常Ca2+遊離がCa2+恒常性を破綻させ、神経脆弱性や病理伝搬を引き起こす分子的基盤となっている可能性が推察された。一方、アミロイドβに関しては、金沢医科大学との共同研究で、アミロイドβとアミロイド前駆蛋白が過剰に発現している3xTgアルツハイマー型認知症モデルマウスでBK型カリウムチャンネルが抑制され神経興奮性が高まるメカニズムを調べた。具体的には、1)3xTgマウス、あるいはhomer1aをノックアウトした3xTgマウスの大脳皮質錐体細胞内にアミロイドβやアミロイド前駆蛋白に対する種々の抗体を注入、2)wild-typeマウスの大脳皮質錐体細胞内にアミロイド前駆蛋白を注入した上で、細胞電気生理学的に解析した。その結果、アミロイドβとアミロイド前駆蛋白の両者が協調してBK型カリウムチャンネルを抑制し神経興奮性を高めることが示された。
3: やや遅れている
PD/DLBで脆弱である種々の神経細胞内外にαシヌクレインオリゴマーを投与した上で行う予定だった機能異常解析は、新型コロナウィルス感染症への対策と、それに伴う院内での臨床エフォートの増加により解析が進まずストップしている。一方、金沢医科大学との共同研究では、アミロイドβとアミロイド前駆蛋白が協調してBK型カリウムチャンネルを抑制して神経興奮性を高めることが示された。
1)部分凝集αシヌクレインが細胞外からどのような神経機能異常を生ずるのかを、細胞内の場合と比較しつつ検討する。2)部分凝集αシヌクレインが、黒質緻密部や扁桃体、マイネルト基底核などPD/DLBで選択的脆弱性をもつ部位におけるニューロンの発火・カルシウム動態にどのように影響するかを調べる。3)部分凝集αシヌクレインによる神経機能異常にアミロイドβがどのような影響を与えるかを、基底核や嗅内皮質、大脳皮質を用いて検証する
次年度使用額が生じた理由:このため、細胞電気生理学的実験の際に使う薬品、蛋白、抗体の購入にかかる費用を用意する必要がある。また、学会での成果発表や論文投稿のための費用が必要である。次年度使用額の使用計画:1)急性脳スライス作成に必要なマウスの購入、2)αシヌクレインオリゴマーやアミロイドβが生ずる機能異常メカニズムを明らかにするのに必要な阻害薬、作動薬、蛋白、抗体、または蛋白間の結合を調べるのに必要な免疫沈降のための実験用品の購入、3)学会発表のための演題登録、学会参加や論文投稿
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