研究課題/領域番号 |
20K07753
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(宇多野病院臨床研究部) |
研究代表者 |
山本 兼司 独立行政法人国立病院機構(宇多野病院臨床研究部), その他部局等, 研究員(移行) (50378775)
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研究分担者 |
澤田 秀幸 独立行政法人国立病院機構(宇多野病院臨床研究部), その他部局等, その他 (30335260)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アミロイドβ / アミロイド前駆蛋白 / BKチャンネル / homer1a / オリゴマー / 3xTgマウス / カルシウム / homer |
研究実績の概要 |
レビー小体型認知症では、αシヌクレインだけでなくアルツハイマー型認知症(AD)患者と同レベルのアミロイドβ(Aβ)を認め、アミロイド沈着が認知機能障害の程度と相関することが報告されている。本年度は、Aβとアミロイド前駆蛋白(APP)が大脳皮質錐体細胞にもたらす機能異常に焦点を当てた研究を行った。BK型カルシウム依存性カリウムチャンネルのサブユニットをコードするKCNMA1は、近年、孤発性ADのrare variant geneであること、また、homer1は大脳においてAβ蓄積のmolecular correlateであることが報告されており、いずれも孤発性ADの病因への何らかの寄与が推察される。 本研究では、金沢医科大学との共同研究で、Aβとアミロイド前駆蛋白(APP)が過剰に発現している3xTg ADモデルマウスやそれらを細胞内注入した野生型マウスの神経細胞で、BK型カリウムチャンネルが抑制され神経興奮性が高まるメカニズムを調べた。具体的には、1)3xTgマウス、あるいはhomer1aをノックアウトした3xTgマウス(4xTg)の大脳皮質錐体細胞内にAβやAPPに対する種々の抗体を注入、2)野生型マウスの大脳皮質錐体細胞内にAPP、Aβ1-42、Bri2を注入した上で、細胞電気生理学的に解析した。 その結果、野生型マウスと4xTgマウスでは、細胞内のAβオリゴマー(Aβo)とAPPそれぞれ単独でBKチャンネルを抑制したが、3xTgマウスでは、BKチャンネル抑制にAβoとAPPの両方が必要であることが判明した。これらの結果から、homer1aのsplicing variantであるlong homerとBKチャンネル、APP、Aβoがmolecular complexを形成することによって、AβoとAPPが協調してBKチャンネルを抑制するという仮説を提唱した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は3xTg ADモデルマウス、homer1aをノックアウトした3xTgマウスに細胞電気生理学的手法を用いた解析が進み、AβとAPPが協調してBK型カリウムチャンネルを抑制して神経興奮性を高めることが判明した。また、そのメカニズムとして、long homerとBKチャンネル、APP、Aβがmolecular complexを形成しているという仮説を提唱することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)部分凝集αシヌクレインが細胞外からどのような神経機能異常を生ずるのかを、細胞内の場合と比較しつつ検討する。 2)部分凝集αシヌクレインが、黒質緻密部や扁桃体、マイネルト基底核などPD/DLBで選択的脆弱性をもつ部位におけるニューロンの発火・カルシウム動態にどのように影響するかを調べる。 3)部分凝集αシヌクレインによる神経機能異常にアミロイドβがどのような影響を与えるかを、基底核や嗅内皮質、大脳皮質を用いて検証する
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:このため、細胞電気生理学的実験の際に使う薬品、蛋白、抗体の購入にかかる費用を用意する必要がある。また、学会での成果発表や論文投稿のための費用が必要である。
次年度使用額の使用計画:1)急性脳スライス作成に必要なマウスの購入、2)αシヌクレインオリゴマーやアミロイドβが生ずる機能異常メカニズムを明らかにするのに必要な阻害薬、作動薬、蛋白、抗体、または蛋白間の結合を調べるのに必要な免疫沈降のための実験用品の購入、3)学会発表のための演題登録、学会参加や論文投稿
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