研究課題
レビー小体型認知症では、αシヌクレインだけでなくアルツハイマー型認知症(AD)患者と同レベルのアミロイドβ(Aβ)を認め、アミロイド沈着が認知機能障害の程度と相関することが報告されている。本研究では、Aβとアミロイド前駆蛋白(APP)が大脳皮質錐体細胞にもたらす機能異常に焦点を当てた研究を行った。BK型カルシウム依存性カリウムチャンネルのサブユニットをコードするKCNMA1は、近年、孤発性ADのrare variant geneであること、また、homer1は大脳においてAβ蓄積のmolecular correlateであることが報告されており、いずれも孤発性ADの病因への何らかの寄与が推察される。本研究では、金沢医科大学との共同研究で、Aβとアミロイド前駆蛋白(APP)が過剰に発現している3xTg ADモデルマウスやそれらを細胞内注入した野生型マウスの神経細胞で、BK型カリウムチャンネルが抑制され神経興奮性が高まるメカニズムを調べた。具体的には、1)3xTgマウス、あるいはhomer1aをノックアウトした3xTgマウス(4xTg)の大脳皮質錐体細胞内にAβやAPPに対する種々の抗体を注入、2)野生型マウスの大脳皮質錐体細胞内にAPP、Aβ1-42、Bri2を注入した上で、細胞電気生理学的に解析した。その結果、野生型マウスと4xTgマウスでは、細胞内のAβオリゴマー(Aβo)とAPPそれぞれ単独でBKチャンネルを抑制したが、3xTgマウスでは、BKチャンネル抑制にAβoとAPPの両方が必要であることが判明した。これらの結果から、homer1aのsplicing variantであるlong homerとBKチャンネル、APP、Aβoがmolecular complexを形成することによって、AβoとAPPが協調してBKチャンネルを抑制するという仮説を提唱した。
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Multiple Sclerosis and Related Disorders
巻: 60 ページ: 103730~103730
10.1016/j.msard.2022.103730