中枢神経系の髄鞘形成細胞であるオリゴデンドロサイト(OL)は、約一世紀前に発見され、その時既に形態学的に4種類(I-IV型)に分類された。I型・II型OLは小径軸索に、III型・IV型OLは大径軸索に髄鞘を形成する。しかし各々のOLの機能や多様性の意義は解明されていない。一方我々はこれまでに、膜貫通タンパク質であるteneurin-4(Ten-4)欠損マウスにおいて、I型・II型OLが発生せず、小径軸索の髄鞘化が特異的に阻害されていることを見出した。更に髄鞘関連疾患において小径軸索がより脆弱であることが知られている。本研究では、Ten-4やその他関連分子に着目して、特に小径軸索髄鞘化の分子メカニズムを解明し、関連疾患の診断や治療への応用を試みた。その結果、1)Ten-4は生後1週齢で髄鞘(OL突起)と軸索の接着面に発現する、2)生後1週齢のTen-4欠損マウスではOL突起と軸索との接着が減少し、3)OLでのアクチン脱重合が進まず髄鞘形成が阻害されている、4)OLのTen-4の細胞外ドメインは軸索のTen-4またはTenアイソフォームと結合して細胞接着を促す、5)OLのTen-4の細胞内ドメインはOL特異的タンパク質であるCNPと結合して、CNPのアクチン重合活性を抑制する、ことが明らかとなった。これらのTen-4を介したメカニズムによって、I型・II型OLは小径軸索に髄鞘を形成していることが分かった。当初の計画では、Ten-4の活性制御分子を同定して応用実験まで行う予定だったが、コロナ禍等の影響もあり、遅れを取ってしまい完結には至らなかった。以下に示したように、これらの成果を各専門誌での論文発表や専門学会の演題発表にて報告した。
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