研究実績の概要 |
(1) パーキンソン病(PD)では異常型α-シヌクレインの重合活性により、大脳神経の死滅が引き起こされる。Nrf2は、抗酸化作用を持つ転写活性化因子であり、その機能障害は、PDを含む様々な疾患に関与する。ドーパミンは神経細胞の活性酸素種(ROS)を増加させ、ROS依存性神経細胞アポトーシスを誘発する。我々はユビキチン特異的プロテアーゼ10(USP10)タンパク質が、Nrf2の抗酸化活性を刺激することで、ドーパミンによる神経細胞の活性酸素産生と活性酸素依存性アポトーシスを抑制することを見いだした。USP10は、Nrf2活性化因子p62と相互作用し、p62のリン酸化を増加させ、p62とNrf2阻害因子Keap1との相互作用を増加させ、Nrf2の抗酸化転写活性を刺激した。さらに、USP10はドーパミンによって誘導されたNrf2の翻訳を増大させた。以上より、USP10は神経細胞におけるNrf2抗酸化活性の重要な制御因子であることが示された。(J Biol Chem. 2022, Sango etal.)
(2) ヒトパレコウイルス(PeV-A)は通常、小児や成人に軽度の病気を引き起こすが、PeV-A3は新生児や乳児に重篤な疾患を引き起こす。我々は、PeV-A3を含む6種類のPeV-Aの感染に必須な宿主因子として、ヒト骨髄関連分化マーカー(MYADM)を特定した。MYADMをノックアウトすることで、PeV-Aのヒト細胞への感染が阻止され、PeV-A感染抵抗性の細胞にヒトMYADMを発現させるとPeV-A感染とウイルス生産が認められた。さらに、PeV-A3のVP0キャプシドタンパク質がMYADMの細胞外ドメインと相互作用することも確認し、MYADMがPeV-A感染に必須のエントリーファクターであることを解明した。(Nat Commun. 2023, Watanabe etal.)
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