研究課題/領域番号 |
20K07758
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
林 義剛 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (10631567)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気分障害 / オリゴデンドロサイト / エピジェネティクス / RRBS |
研究実績の概要 |
気分障害は、大うつ病と双極性障害を含む疾患の総称であり、認知・情動・意思決定に強く関連する前頭前野が病態責任部位の一つとして注目されている。神経細胞同士のコネクションや神経細胞―グリア細胞の相互作用により機能している脳は、その破綻により様々な疾患を誘発する。研究代表者は、気分障害患者の前頭前野特異的にオリゴデンドロサイトとその前駆細胞が減少していることを発見し報告した。本研究では、オリゴデンドロサイトの破綻と気分障害の病態との関連を、エピジェネティック解析から明らかにすることを目的とする。具体的には、気分障害との関連が強い自殺者および対照群の前頭前野の神経細胞、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞のDNAメチル化状態を網羅的に調べる。これにより、未だ報告のないオリゴデンドロサイト系譜細胞の細胞種特異的エピゲノム情報を得ると同時に、気分障害や自殺に関連する因子の同定をすることで、病態解明を目指す。 解析対象となる自殺者および対照者の死後脳は、滋賀医科大学法医学教室との共同研究により提供を受けた。なお、ヒトを対象とした研究は滋賀医科大学倫理委員会の承認を受け行っている。今年度は、自殺者4例、対照者6例の死後脳前頭前野から、神経細胞、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞をフローサイトメーターにより分取し、DNAを抽出した。抽出したDNAは、Reduced Representation Bisulfite Sequencing法によりライブラリーを作製し、次世代シーケンサーによる解析を行った。現在、次世代シーケンサーにより解析したデータを、ヒト遺伝子にマッピングを行いDNAメチル化状態を詳細に解析中である。来年度では、神経細胞やオリゴデンドロサイト系譜細胞間のメチル化状態の違いや、自殺者と対照者のメチル化状態の違いなどの結果を得る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画では、初年度中に次世代シーケンサーでの解析を行い、初年度と2年目にデータの解析を行うことを予定してる。次世代シーケンサーのデーターは、非常に情報量が多く、解析に時間がかかる。初年度の初期に検体の採取と、検体からの神経細胞、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞のDNAの採取ができ、次世代シーケンサーによる解析を行うことができたことにより、次世代シーケンサーデータの解析に多くの時間をさくことが可能となった。そのため、現在のところ、大きな遅れはなく、順調に解析が進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、自殺者4例、対照者6例の神経細胞、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞のDNAメチル化の解析が進んでいる。DNAメチル化は、遺伝子内もしくはプロモーター領域のシトシンがメチル化を受けているか受けていないかで、当該遺伝子の発現を調整することが知られている。本研究では、メチル化状態の解析を行うが、最終的なアウトプットとして遺伝子発現解析も必要であると考える。しなしながら、本研究で用いる検体は、すでに凍結されており、細胞を分離することが困難である。近年、核内のスプライシング前のものも含むRNAの解析でも、細胞から抽出されたRNAと同様に解析が可能となってきた。そのため、本研究においても、核内RNAを用いたRNA-seqを行い、メチル化状態との比較を行うことを新たに計画し、現在予備実験中である。
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