研究課題/領域番号 |
20K07765
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
上窪 裕二 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80509670)
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研究分担者 |
高杉 展正 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (60436590)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Gタンパク質共役型受容体 / シナプス / アルツハイマー病 / GABAB受容体 |
研究実績の概要 |
膜タンパク質の構造と機能解析技術の進歩に伴い、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)をはじめとする細胞膜タンパク質間の複合体形成と機能的な相互作用が明らかとなりつつある。膜タンパク質が形成する巨大な複合体は、膜タンパク質の実態であり、その理解は生命科学の発展に大きく寄与すると考えられる。本研究では多種類の膜タンパク質からなる巨大な複合体(超複合体)の形成とその機能を明らかにするため、アルツハイマー病(AD)の原因の1つであるアミロイドベータ(Aβ)の前駆タンパク質 (Amyloid precursor protein; APP)とGPCR複合体が形成する複合体に注目する。 先行研究によってAPPの細胞外ドメインの一部が異種GPCR複合体を形成するB型ガンマアミノ酪酸(GABA)受容体(GABAB受容体)と相互作用することが報告された。そこで、代表者らは相互作用部位のペプチドを合成し、GABAB受容体をテトラサイクリン誘導性に発現する細胞株を作製し、APP部分ペプチドとGABAB受容体の相互作用について検討を行った。GABAB受容体のシグナル伝達に対する影響を評価するために細胞内cAMP濃度をライブセル蛍光イメージング法を用いて評価した。相互作用が推定されるAPPの細胞外領域ペプチドを合成し、作成した細胞株に投与した結果、相互作用が報告されているペプチドはGABAB受容体のGi/Goシグナルに影響しない可能性が示唆された。今後はGタンパク質を介しないシグナル伝達と複合体形成について評価する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究が実施できない状況が続き、研究に必要な消耗品などが世界的に不足する状況が続いたため研究の進捗が遅れている。 一方で共同研究によって、新たな膜タンパク質の複合体を発見し、その解析を進めている。そのため、当初の予定とは異なった方面においては研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
APPの細胞外ペプチドはHEK293細胞に発現するGABAB受容体のシグナル伝達を惹起しない可能性が示唆された。一方で直接的な相互作用については評価できていないため、免疫染色法や分子間相互作用解析によってこれらの分子の相互作用について評価を行う。 神経細胞上では、GABAB受容体のアゴニストであるGABAなどの神経伝達物質が常に存在しており、GABAB受容体自体が他の膜分子と相互作用して様々な制御を受けている。そこで我々は、GABAB受容体のGABAに対する親和性に変化や、GABAB受容体が相互作用する代謝型グルタミン酸受容体(Metabotropic glutamate receptor; mGluR)の影響について評価を行う。また、全長のAPP分子との相互作用についても評価を行う。さらに新しく複合体形成が示唆された膜タンパク質について解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が実施できない状況が続いたため消耗品などの使用量が当初予定より少なくなった。また、当初予定していた学会がオンライン発表などとなったり、中止になったりしたため、学会旅費などの使用がなかったため。
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