研究課題/領域番号 |
20K07770
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
戴 毅 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (20330441)
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研究分担者 |
神田 浩里 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (80842088)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | AMPK / PAIN / 代謝異常 / 疼痛過敏 / TRPA1 |
研究実績の概要 |
本年度は、まずEx-vivoで後根付きDRG標本において、小型細胞の膜興奮性をホールセルパッチクランプ法で観察した。同時に、AMPK下流シグナルのactivatorやinhibitorを用いてその機能変化を解析し、AMPKによる各疼痛関連タンパクの調節機構を検討しいる。その結果として、7週齢のdb/dbマウスにおいて膜興奮性の上昇が認められた。この膜興奮性の上昇に対するAMPKシグナルによる影響について現在解析中である。また、代謝性異常に起因とする痛みについて文献的に先行研究を網羅的検索し、我々のデータと比較、解析した。その成果として、AMPKおよびその下流シグナルによる痛みの調節機構について総説としてまとめ、Lifeにて発表した(業績を参照)。 上記の研究と平行して、代謝異常がもたらす内臓知覚過敏について研究に取り組んだ。狭心痛や腹痛など内臓痛における代謝異常の関与を調べるため、肥満症を発症するラットやマウスを用いて、冠状動脈結紮や虚血再潅流の狭心痛と、ストレス性胃痛や下腹部痛の動物モデルを構築した。虚血再潅流のモデルラットでは、強制運動による胸部痛が認められ、この胸部痛は心筋における過酸化水素の増加と、TRPA1の関与が認められた。TRPA1はAMPKおよびNedd4-2によって負の細胞膜発現調整が明らかになっているため、肥満症ラットにおける胸部痛の増強が示唆された。これらの成果を論文にまとめ発表した(業績参照)。一方、マウスの虚血再潅流モデルは死亡率が高く、その構築は極めて困難であったため、現在肥満症を発症するラットのモデルの確立を目指すように計画を変更した。 また、代謝異常を調節して痛みを緩和する天然薬物成分のスクリーニングを行った。AtoractyrodinがTRPA1の活性を調整することを明らかにし、その成果をまとめて論文を発表した(業績参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で物流が影響され、試薬の入荷が遅れる時期があったため、研究の進展にはある程度の遅れが生じた。 また、予定した肥満動物(マウス)の虚血再潅流のモデル作製は、死亡率が高く予定通り進められなかった。現在、動物種をラットに変えて研究計画を練り直している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、まずの知覚過敏を発症する7週齢のdb/dbマウスと知覚鈍麻を発症する22週齢db/dbマウスの一次知覚ニューロンにおける遺伝子の活性化変化をRNAシーケンスで解析する。具体的にはm/mマウス、7週齢db/dbマウス、22週齢db/dbマウスのDRGニューロンのトータルRNAを抽出し、シーケンスを取得後、既知遺伝子発現の定量解析を行う。3群の比較で知覚過敏に関わる遺伝子、知覚鈍麻に関わる遺伝子を同定し、一次知覚ニューロンにおけるそのIn situ発現を検討する。 つぎに、ヒットした遺伝子について、モデル動物におけるDRGニューロンにおけるタンパク質の発現パターンを解析する。タンパクレベルの変化も確認できれば続けてその機能的解析を進めていく予定である。具体的に、阻害剤やSiRNAを用いてそのタンパクの機能を阻害した際に動物の疼痛行動的な変化を検討する。 次年度の研究を遂行する上での課題として、虚血再灌流モデルを作成する際に、肥満マウスは死亡率が高く用いにくい点があった。これを解決するため、肥満ラットモデルを導入し、内蔵痛のモデルを再構築する。肥満ラットの虚血再潅流モデルでの疼痛感覚は対象群ラットと比べて、肥満を起因とする感覚異常の分子メカニズムを探索する。また、上記シーケンス検索でヒットした遺伝子を活用して、モデル動物を用いた研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ます、予定していたdb/dbマウスを用いた虚血再潅流のモデルの作製は、動物の死亡率が高かったため、予定通り進められなかった。db/dbマウスは高価な動物であるため、経費の余剰が出てしまった。翌年度は肥満ラットモデルを使用しモデルを作製する予定で、これに余剰経費をすべて充当される。(使用予定の遺伝子変異型肥満症ラットはdb/dbマウスと同じく高額である) また、年度内に発注した一部の用品・サービスは納品は年度またぎとなってしまった。
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