最終年度では、知覚過敏を発症する7週齢のdb/dbマウスと知覚鈍麻を発症する25週齢db/dbマウスの一次知覚ニューロンにおける遺伝子の活性化変化をRNAシーケンス解析を行った。具体的にはm/mマウス(コントロールマウス)、5週齢db/dbマウス(疼痛過敏見発症)、7週齢db/dbマウス(疼痛過敏発症)、25週齢db/dbマウス(疼痛鈍麻発症)のDRGニューロンのトータルRNAを抽出し、シーケンスを取得後、既知遺伝子発現の定量解析を行った。さらに4群の比較で知覚過敏に関わる遺伝子の候補を同定し、一次知覚ニューロンにおける発現を検討した。その結果、予測した疼痛関連遺伝子(TRPチャネルなど)の発現変化が認められなかったが、疼痛過敏の発生に伴って発現上昇し、疼痛過敏のない時期に発現レベルが低下している遺伝子を発見した。今後はこの遺伝子の詳細解析を行い糖尿病ニューロパシーの発症におけるその役割を検討していく予定である。 研究期間全体を通して実施した研究の成果は以下でまとめる。 1)疼痛過敏に伴う代謝異常病態モデル動物の確立した。2)モデル動物におけるエネルギー代謝関連遺伝子およびその下流シグナルによる疼痛受容関連受容体への調節機構を解析し、AMPK-Nedd4-2シグナルによるTRPA1の膜発現調整の分子メカニズムを解明した。研究成果の学会および論文発表を行った。3)糖尿病性ニューロパチーの知覚過敏発症に密接に関連する遺伝子の同定を成功し、さらなる病態解明の切っ掛けとなる分子を提示した。
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