研究課題
全mRNAの転写を司るRNAポリメラーゼIIによる転写開始にあたって、多数の基本転写因子群から構成される転写前複合体を形成するために基本的転写共役複合体メディエーターを必要とし、メディエーターがなければ転写は開始しない。約31個のサブユニットから成るメディエーターはこのように基本的転写共役複合体としての性質を持ちつつ、そのサブユニット構成が特異的転写コアクチベーターとしての側面を併せ持つ。サブユニットのうちMED1は2つの核内受容体結合モチーフLxxLLを介して核内受容体と結合し、核内受容体特異的コアクチベーターとして機能する。私達はこれまでにMED1ノックアウトマウスの他、マウスのMED1の2つのLxxLLモチーフをLxxAAに改変した遺伝子改変マウスを作成している。またMED1ノックアウトマウス由来細胞を用いた培養系で、MED1がPPARγを介する脂肪形成に必須であること、しかしMED1のLxxLLモチーフは脂肪形成には不要であることを明らかにしている。現に、MED1のLxxAA改変マウスは脂肪形成を含め、正常に発生する。しかし、高脂肪食負荷において同マウスが肥満抵抗性を示すことをこれまでに見出している(未発表)。本研究では自然免疫機構の面からそのメカニズムを解明する試みである。近年内臓白色脂肪組織に存在する2型自然リンパ球が代謝の改善に関与することが報告され、注目されている。そこで本LxxAA変異マウスの2型自然リンパ球を正確に定量した。その結果、通常の飼育下において、本変異マウスの内臓白色脂肪組織の2型自然リンパ球数は野生型のものと同等であったが、IL-33を投与することによって2型自然リンパ球を賦活化すると、野生型マウス内臓白色脂肪組織での2型自然リンパ球数の増加よりも本変異マウス内臓白色脂肪組織の2型自然リンパ球の増加が倍増した。このことから、本変異マウスでは2型自然免疫の賦活化が起きやすいことが考えられる。
3: やや遅れている
神戸大学ではコロナ感染症蔓延の影響で長期間にわたって研究活動の制限が余儀なくされたことにより、当初期待していたよりも遅れざえるをえなかった。
引き続いて、当初の計画の研究を継続し、MED1のLxxAA変異マウスを代謝と自然免疫の観点から解析する予定である。
わずかな端数の金額は、使い切るよりも繰り越して有効に使用する方がよいと判断した。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
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