アミロイド前駆蛋白遺伝子の新規変異2例における病理組織学的検索をすすめた.その結果,1例は高度アルツハイマー病理のみで,その他のレビー小体関連病理およびTDP43関連病理は認めなかったものの,もう1例は高度アルツハイマー病理に加えてレビー小体病理関連を認め,TDP43病理は認めなかったことが判明した.これにより,同一家系であってもアミロイド,タウ,アルファシヌクレイン,TDP43の蓄積がことなることが明らかとなり,孤発例での背景病理の理解が進んだ.次にアミロイド前駆蛋白遺伝子の新規変異に対する抗体を用いて,同変異の剖検例に対して免疫染色を行ったところ,変異特異的なアミロイドを検出することができた.一方,同抗体を用いて孤発性アルツハイマー病の老人斑およびアルツハイマー病の診断には至らないレベルの,高齢者に蓄積する老人斑(アミロイド)に対して免疫染色を試みたが,同抗体ではこれらのアミロイドを検出することができなかった.以上より,本抗体は変異特異的なアミロイド抗体であることが組織学的にも証明された.これらの結果から,当初計画していた孤発性アルツハイマー病剖検例における生前の脳脊髄液を用いたELISAによる変異アミロイドの検出は難しいことが判明した.また,新規変異剖検例では,変異型アミロイドの蓄積と通常の抗アミロイド抗体免疫染色で認識されるアミロイドとでは,分布と程度に差がないことが明らかとなった.
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