研究課題
本研究ではgut-muscle axisに着目して、がんに伴う腸内細菌叢の構成変化(dysbiosis)がサルコペニア病態形成に与える影響を解明し、腸内細菌叢を標的とした新たなサルコペニア治療概念のPOCを確立することを目的としている。本年度は、食物繊維の多寡が、がんサルコペニア形成に及ぼす影響について検討を行った。大腸がん細胞株Colon26をBalb/cマウスに皮下移植する担がんマウスモデルを用いて、fiber rich食(AIN-93G-cellulose+水溶性食物繊維グァーガム分解物(PHGG))とfiber free食(AIN-93G-cellulose)のいずれかを与え、サルコペニア形成への影響を検討した。腫瘍移植により体重減少および骨格筋量の減少を認めたが、fiber rich食を与えたマススにおいては、それらの減少はfiber free食のマウスに比し抑制された。骨格筋分解に関わるatrogin-1, MuRF-1などのユビキチンリガーゼおよびLC3a, LC3bなどのオートファジーマーカーの発現は、fiber free食マウスで上昇していたが、fiber rich食マウスではそれらの上昇は抑制されていた。これらの結果から、食物繊維による食事介入がサルコペニア形成に影響を及ぼすことが示唆され、現在、そのメカニズムの詳細について検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
食餌中の食物繊維の多寡が、がんサルコペニア形成に影響を及ぼすことから、担がんサルコペニアモデルにおいてGut-muscle axisの存在が示唆されたが、その機序解明のため、①腸内細菌叢の構成変化、②腸内バリア―機能、③腸内細菌叢代謝産物、④腸管免疫状態、⑤血中サイトカイン・生理活性物質、に注目して解析を進めている。すでに、腸管壁の組織染色での粘液層の評価、tight junction関連蛋白の発現および血液検体におけるBioPlexサイトカインアレイでの各種サイトカインの解析は終えており、研究の進捗状況は全体としてはほぼ予定通りと考えている。さらに、現在、腸管免疫状態、細菌叢の構成およびその代謝産物の解析を進めており、研究の全体として進捗ははほぼ予定通りと考えている。
今後は、in vivoモデルでの腸管免疫状態、細菌叢の構成およびその代謝産物の解析を中心に検討を進めている。さらに、筋管細胞を用いたin vitroの系で、短鎖脂肪酸の影響について解析し、がんサルコペニアにおけるgut-muscle axisの詳細を解明し、がんサルコペニア治療に繋がる基盤的研究成果の獲得を目指す。
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