研究課題/領域番号 |
20K07787
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
石川 剛 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90372846)
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研究分担者 |
内藤 裕二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00305575)
岡山 哲也 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30636535)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サルコペニア / 腸内細菌 / がん |
研究実績の概要 |
本研究ではgut-muscle axisに着目して、がんに伴う腸内細菌叢の構成変化(dysbiosis)がサルコペニア病態形成に与える影響を解明し、腸内細菌叢を標的とした新たなサルコペニア治療概念のPOCを確立することを目的としている。2021度は、がんサルコペニアマウスモデル(大腸がん細胞株Colon26をBalb/cマウスに皮下移植)における水溶性食物繊維グァーガム分解物(PHGG)のサルコペニア抑制効果のメカニズムについての検討を行った。PHGG投与群の結腸上皮では、粘液層の高度の菲薄化および細菌の上皮内への侵入像が観察され、血中lipopolysaccharide binding protein (LBP)およびIL-6は有意に上昇していた。また、腸内細菌叢解析では、PHGG投与群でBifidobacterium属, Akkermansia属といった腸管粘液層の維持に必要とされる菌種とS24-7科といった短鎖脂肪酸(SCFA)産生菌の増加が見られた。便中SCFA解析では, PHGG投与群で、酢酸,プロピオン酸,コハク酸,総SCFA濃度は有意に高かった. これらの結果から、PHGG投与が担がんマウス結腸にみられるleaky gutを改善し、血中のLPSなどの低下を介して、筋肉内におけるユビキチンリガーゼ、オートファジー関連など筋萎縮関連遺伝子の発現上昇を抑制することが、抗サルコペニア作用の1つの機序として考えられた。現在、microarrayを用いたマウス骨格筋の網羅的遺伝子発現解析を行うとともに、培養筋管細胞を用いたin vitro実験で、SCFAの筋細胞への直接的影響を検討し、PHGGの抗サルコペニア作用について詳細な検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
担がんサルコペニアモデルを用いて、初年度にGut-muscle axisの存在を証明し、2021年度は、水溶性食物繊維(PHGG)が抗サルコペニア作用を有し、その機序として腸内フローラの変化を介した腸管バリア機能改善が、LPS・IL-6などの血中濃度を低下させ、骨格筋の異化を抑制していることを示した。現在、詳細な機序の解析を進めており、研究の全体として進捗ははほぼ予定通りと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vivoモデルで、代謝産物の解析と骨格筋の遺伝子発現解析を進めるとともに、筋管細胞を用いたin vitroの系で、特に短鎖脂肪酸の影響について解析し、がんサルコペニアにおけるgut-muscle axisの詳細を解明し、がんサルコペニア治療に繋がる基盤的研究成果の獲得を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス実験が新型コロナ感染蔓延の影響で一時期遅れたため, R4年度にマウスモデルを用いて、代謝産物の解析と骨格筋の遺伝子発現解析を実施予定
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