研究課題
同種造血幹細胞移植(HSCT)の予後に影響する新たな因子を解明するため、ドナーおよび患者因子、各種病態のバイオマーカーの解析を行なった。1)移植関連血栓性微小血管症(TA-TMA)患者15例と非TA-TMA患者15例で補体関連遺伝子17個の変異の平均数に差はなかった。HSCT後7日目の補体Baタンパク質のレベルはTA-TMA症例で有意に高かったが、可溶性C5b-9を含む他のパラメーターは差がなかった。 28日目以降のTA-TMAグループのC3、C4、CH50、および補体因子HおよびIのレベルは、非TA-TMAグループのレベルよりも有意に低かった。2)HLA適合血縁ドナー(MRD)またはHLA適合非血縁ドナー(MUD)からの同種HSCTにおいて移植後シクロホスファミド(PTCy)とタクロリムスによるGVHD予防により、移植後100日での急性GVHD II-IVおよびIII-IVの累積発生率は、MRDグループでそれぞれ18%および5.9%、MUDグループでそれぞれ18%および9.1%であった。1年後の中等度から重度の慢性GVHDの累積発生率は、MRD群とMUD群でそれぞれ12%と9.1%であった。MRD群とMUD群の1年全生存率はそれぞれ88%と64%で、1年GVHDなし、無再発生存率はそれぞれ59%と50%であった。3)HSCTを受けた患者100例の血清IgG、IgG2およびIgG4のレベルを時系列に測定し、リンパ系悪性腫瘍、臍帯血、HSCT後の日数が低血清IgG2レベルの重要な危険因子であった。4)HSCT患者のサイトメガロウイルス感染症治療にホスカルネットが投与された患者47例のうち51.1%で急性腎障害(AKI)を認め、非AKI症例よりも投与期間が有意に長く、ROC曲線を使用したホスカルネット投与期間の適切なカットオフ値は27日であった。
2: おおむね順調に進展している
同種造血幹細胞移植(HSCT)の予後に影響する因子の解析結果を複数の論文に公開した。(1)移植関連血栓性微小血管症においてHSCT後7日目の補体Baタンパク質が高値であることを示した論文をFront Immunolに公開した。(2)HLA適合血縁ドナーおよびHLA適合非血縁ドナーからの同種HSCTにおける移植後シクロホスファミド(PTCy)とタクロリムスによるGVHD予防の有用性を示した論文をInt J Hematolに公開した。(3)HSCTを受けた患者で、リンパ系悪性腫瘍、臍帯血、HSCT後の日数が低血清IgG2レベルの危険因子であることを示した論文をTranspl Immunolに公開した。(4)ホスカルネットを投与したHSCT患者において27日以上の投与が急性腎障害の危険因子であることを示した論文をTranspl Infect Disに公開した。(5)PTCyを用いたHLA-ハプロタイプ一致HSCTにおいてドナーNKG2D遺伝子多型rs1049174 CCが再発/進行のリスク低下に関連することを示した論文をTransplant Cell Therに公開した。(6)HSCT後の急性辺縁系脳炎、カルシニューリン阻害剤誘発性脳症発症の危険因子を示した論文をTransplant Cell Therに公開した。(7)移植前NT-proBNPとBNP上昇が全生存率低下と非再発死亡率上昇の危険因子であることを示した論文をBone Marrow Transplantに公開した。
(1)機械学習モデルが推奨するパーソナライズされた同種造血幹細胞移植の予後予測効果を日本造血・免疫細胞療法学会のレジストリーデータを用いて検証する。機械学習モデルとしてランダムサバイバルフォレストとDeepSurvを使用する。前処置強度、ドナーソース、移植後シクロホスファミドに基づいて10の同種造血幹細胞移植手順を分類し、全体をトレーニングコホートとテストコホートに時系列で分割する。年齢、疾患、疾患状態、パフォーマンスステータス、造血細胞移植特異的併存疾患指数(HCT-CI)、サイトメガロウイルス感染状況、10の同種HSCT手順を予後変数として、同種造血後の全生存期間(OS)の機械学習予測モデルをトレーニングし、各テスト患者における10の同種造血幹細胞移植手順の1年OSの予測確率を計算する。患者によっては一部のドナーが利用できないため、機械学習の推奨のためにドナーの選択に制限を課す際に、1年OSの予測確率が最も高い手順を機械が推奨する同種造血幹細胞移植手順と定義する。実際の同種造血幹細胞移植手順が機械学習で推奨されている手順と一致しているかどうかに応じて、テストコホートを推奨グループと非推奨グループに分け、OSを比較する。(2)高齢者や併存疾患を有するため強度減弱前処置によるHCTを1-2遺伝子座HLA不一致非血縁ドナー(MMUD)または臍帯血で行う場合の予後比較を行う。(3)骨髄異形成症候群患者の同種移植前の非感染性発熱と非感染性肺障害が移植予後に影響するかを検討する。(4)経直腸門脈シンチグラフィーによるシャントインデックスが移植後類洞閉塞症候群の発症を予測できるかを検討する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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