研究課題/領域番号 |
20K07790
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
日向 須美子 北里大学, 東洋医学総合研究所, 部長補佐(研究) (60353471)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非小細胞肺がん / 麻黄 / osimertinib / 活性型変異EGFR / c-Met / ダウンレギュレーション |
研究実績の概要 |
臨床では分子標的治療薬EGFRチロシンキナーゼ阻害剤 (EGFR-TKI)の適応となるのは、活性型変異EGFR発現非小細胞肺がんであるため、EGFR活性型変異を有し、c-Metを過剰発現するH1975細胞を用いて麻黄エキス(EHE)と EGFR-TKI・osimertinibの併用効果を解析した。c-Met、pMet、活性型変異EGFR、pEGFRの発現に対する効果をWestern-Blottingで解析した。EHEの添加後、pMet、Metの発現量は経時的に低下して24時間後に回復傾向を示し、活性型変異EGFR及びpEGFRの発現量は経時的に低下し24時間後も回復しなかった。またこれらの発現はEHEの添加濃度依存的に低下した。以上から、EHEはc-Metだけなく活性型変異を有するEGFRのダウンレギュレーションとリン酸化阻害をすることが明らかになった。Osimertinibは、EGFRのリン酸化を経時的、及び、添加濃度依存的に阻害した。osimertinibとEHEの併用効果を調べた結果、両試薬の添加濃度依存的にc-Met, pMet, 及び、活性型変異EGFR, pEGFRの発現が低下した。続いて、H1975細胞の増殖に対する効果を検討した。細胞を24時間培養後にEHEを添加し5日間培養すると、EHE濃度依存的に増殖が抑制され、250μg/ml EHEで90%以上抑制された。細胞を72時間培養後にEHEを添加し5日間培養するとEHEの効果は低下した。そこで、同様の条件下でEHEとosimertinibの併用効果を解析した。種々の濃度のosimertinibにEHEを併用した結果、増殖停止と細胞数の低下が観察された。以上から、活性型変異EGFRを有する非小細胞肺がんに対してEGFR-TKIとEHEの併用は効果的であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
麻黄エキスは、活性型変異を有するEGFRについても、Wild typeのEGFRに対する作用と同様に、ダウンレギュレーション及びリン酸化阻害効果を有することが明らかになった。さらに、EGFRに活性型変異を有する非小細胞肺がんの治療において、分子標的治療薬EGFRチロシンキナーゼ阻害剤 (EGFR-TKI)と麻黄エキスの併用が有効である可能性が高いことが示唆された。現在、これらの研究成果を論文にまとめており投稿予定ある。また、第81回日本癌学会学術総会で発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vivo解析として、H1975細胞をヌードマウスに移植して担がんモデルマウスを作製し、osimertinib 単独、あるいは麻黄エキス単独投与よりも、osimertinibと麻黄エキスの併用の方が抗腫瘍効果が高くなるのかどうか解析する。さらに、腫瘍のc-MetやEGFRの発現量の変化を解析するため、担がんモデルマウスをオシメルチニブと麻黄エキスで治療した後の腫瘍組織を回収し、受容体発現量をWestern-blottingで解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、in vivo試験(ヌードマウスへの肺がん細胞株の移植実験)を実施する予定だったが、in vitro試験の結果の再現性を得るための実験に時間を要し、in vivo試験に進めなかった。次年度にin vivo試験を実施するためのヌードマウスの購入や組織を用いた解析のための試薬の購入に充てるため。
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