2023年度は文科省コホート・生体試料支援プラットフォーム「生体試料による活動支援」を通じstage 4の肺腺癌患者血清および血液由来DNA等の提供を受け、これを用いてsnRNA U2遺伝子のコピー数多型解析を実施した。 結果1.日本人コホートにおけるsnRNA U2遺伝子のコピー数:デジタルPCRにより患者群(n=46)および健常者群(二次利用検体;n=36)について細胞内の総コピー数を求めた。患者群26~99 copy/cell、健常者群31~82 copy/cellで、マン・ホイットニーの順位解析により、2群間に有意差はなかった(p=0.283)。結果2.snRNA U2の断片であるmiR-1246の血清レベル:リアルタイムPCRにより血清miR-1246レベルを求めた。これまでの報告通り患者群では健常者群(二次利用検体)に比べ有意に高値を示した(p<0.001)。結果3.snRNA U2遺伝子コピー数とmiR-1246の血清レベルとの相関:結果1、2のデータを用いスペアマンの順位相関解析を行った。患者群および健常者群のrs値はそれぞれ-0.269および-0.07で、何れの群でも相関は見られなかった。結果4.外科的切除前・後の血清miR-1246レベル:切除6~12か月後では8検体中7検体でmiR-1246レベルが低下していた。 上記の結果から、miR-1246は優れた肺腺癌マーカー候補と考えられ、snRNA U2遺伝子のコピー数多型によるmiR-1246レベルへの影響は見られないことが明らかになった。更に当該遺伝子の発現には遺伝子量補償など未知の調節が存在することが強く示唆された。
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