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2022 年度 実績報告書

漢方薬の薬理作用とアクアポリン機能の密接な関係を利用した薬理学的基盤の構築

研究課題

研究課題/領域番号 20K07795
研究機関東京理科大学

研究代表者

礒濱 洋一郎  東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (10240920)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードアクアポリン / 漢方薬 / 五苓散 / 脳内炎症
研究実績の概要

脳内のアストロサイトに存在するアクアポリン-4 (AQP4)は血液脳関門における主要な水の通過路となり,脳脊髄液の生理的な代謝に重要な役割を果たす.しかし,体内の浸透圧バランスが崩れると,AQP4は脳浮腫形成を促進するため,AQP4の阻害は脳浮腫の治療につながることが示唆されている.一方,AQP類は水の輸送のみならず,サイトカイン刺激時の反応すなわち炎症応答を亢進する新機能を持つことが明らかにされつつある.我々は漢方薬の五苓散がAQP4の水チャネル機能を著明に抑制することを見出してきた.本年は特にAQP4による炎症応答への影響を明確にするとともに,本新機能に対する五苓散の作用を調べた.
まず,AQP4を過剰発現させた細胞では,TNF-αあるはLPSで誘発したケモカインのmRNA発現がコントロール細胞に比べてより著明となり,AQP4が炎症反応の増悪因子となることがわかった.AQP4の高発現細胞では定常時のMEK/ERKのリン酸化が亢進し,AQP4による炎症応答の亢進はEKR阻害薬により抑制したため,このMEK/ERKが少なくとも一部AQP4による炎症応答の亢進に関わると推定された.また,五苓散はAQPを持たない細胞では少なくともTNF-αで誘発したケモカイン産生に著明な作用を示さないものの,AQP4発現細胞ではAQP4によって亢進された反応を有意に抑制した.さらにこの五苓散によるAQP4の炎症応答亢進の抑制をin vivoの実験系で検証するため,LPSをマウスの脳内に注入して誘発した急性脳炎モデルで調べたが,五苓散はLPSによる脳内のサイトカイン発現および運動機能障害を著明に抑制した.興味深いことに,マウスの腹腔内にLPSを投与して誘発した消化管の炎症は五苓散により抑制されず,本方剤の抗炎症作用がAQP4の存在する脳に選択的であると考えられた.

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 2件、 招待講演 13件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 五苓散の薬理作用とアクアポリンの密接な関係2022

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎,村上一仁
    • 雑誌名

      細胞

      巻: 54 ページ: 812-815

  • [学会発表] アクアポリン水チャネルの機能 および発現の薬理学的調節2023

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      第87回 日本循環器学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 利水剤を科学する: 利水作用とアクアポリン2023

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      京都心不全ネットワーク
    • 招待講演
  • [学会発表] 利水剤を科学する-利水作用とアクアポリン2023

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      第81回 熊本脳神経外科漢方研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 漢方の利水作用への科学的アプローチ -漢方薬の薬能を担う分子アクアポリン2022

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      左京医師会 学術講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 漢方の利水作用とアクアポリン2022

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      KAMPO 水 セミナー in 滋賀
    • 招待講演
  • [学会発表] 漢方薬の利水作用とアクアポリンの密接な関係-基礎薬理学的アプローチの成績から2022

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      GOREISAN FORUM in KOCHI
    • 招待講演
  • [学会発表] 漢方の利水作用への科学的アプローチ -漢方薬の薬能を担う分子アクアポリン2022

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      京都北・上京東部・西陣医師会 三地区合同学術講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] Aquaporins Provide New Insights into the Molecular Mechanisms of Kampo Medicine2022

    • 著者名/発表者名
      Yoichiro Isohama
    • 学会等名
      1st International Symposium on Kampo Medicine
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 気管支喘息の病態形成および ステロイド応答性に対するIL-17の役割2022

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎,大野秀顕 ,村上一仁 ,岩倉洋一郎
    • 学会等名
      日本肺サーファクタント・界面医学会第58回学術研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 漢方の利水作用への科学的アプローチ -五苓散の作用とアクアポリンの密接な関係2022

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      第12回日本中医薬学会学術総会
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 髄液減少に伴う諸症状に対する 漢方薬治療の薬理学的合理性2022

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      第75回日本自律神経学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 利水剤を科学する -利水作用とアクアポリン2022

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      五苓散 CARDIOLOGY SEMINAR
    • 招待講演
  • [学会発表] 人参養栄湯及び十全大補湯による 腫瘍免疫活性化作用と骨髄由来 免疫抑制細胞(MDSC)2022

    • 著者名/発表者名
      礒濱洋一郎
    • 学会等名
      第39回和漢医薬学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 五苓散による臓器選択的抗炎症作用とその機序2022

    • 著者名/発表者名
      村上一仁,清水智史,松本千波,礒濱洋一郎
    • 学会等名
      第39回和漢医薬学会学術大会
  • [学会発表] 骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)の遊走に対する人参養栄湯および十全大補湯の抑制作用2022

    • 著者名/発表者名
      近藤雄太,村上一仁,韓立坤,高橋隆二,礒濱洋一郎
    • 学会等名
      第39回和漢医薬学会学術大会
  • [学会発表] がん細胞によって促進される骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)の遊走に対する人参養栄湯および十全大補湯の抑制作用2022

    • 著者名/発表者名
      近藤雄太,村上一仁,韓立坤,高橋隆二,礒濱洋一郎
    • 学会等名
      第96回日本薬理学会年会
  • [学会発表] Cyclic AMP/PKAシグナルはCa2+により生じるアクアポリン5の細胞膜移行を亢進する2022

    • 著者名/発表者名
      服部 友万成,村上 一仁,礒濱 洋一郎
    • 学会等名
      第96回日本薬理学会年会
  • [学会発表] 青薫由来の水溶性成分の核内受容体AhR活性化薬としての薬理学的特徴2022

    • 著者名/発表者名
      坪井 妙惠,村上 一仁,礒濱 洋一郎
    • 学会等名
      第96回日本薬理学会年会
  • [図書] 新しい疾患薬理学 改定第2版2022

    • 著者名/発表者名
      岩崎克典,徳山尚吾,礒濱洋一郎
    • 総ページ数
      606
    • 出版者
      南江堂
    • ISBN
      978-4-524-40406-3

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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