研究課題
糖尿病性腎臓病の進展に組織の微小循環障害による低酸素障害が重要である。近年腎保護作用が明らかにされたSGLT2阻害薬はケトン体の増加や過剰濾過の抑制などを介して腎の仕事量を減らし、酸素必要量を減少させると考えられる。そこで本研究において、微量アルブミン尿期(尿アルブミン30-299 mg/gCr)で年齢20-79歳、HbA1c6.5-10%である2型糖尿病患者80名に対してエンパグリフロジンあるいはプラセボに1:1で割り付け、半年間投与を行ない、投与時および6ヶ月後に尿アルブミン排泄と尿細管障害のマーカーである尿中Liver type datty acid binding protein (L-FABP)排泄の変化を検討した。さらに腎低酸素障害で誘導される、血清Vascular endothelia growth factor、アドレノメデュリン、Angiopoietin like protein-2、Angiopoietin like protein-4レベルの変化を検討した。被験者の背景はプラセボ群で男性76.9%、年齢70.3±9.5歳、HbA1c7.20±0.82、エンパグリフロジン群で男性80%、年齢71.0±8.1歳、HbA1c7.01±0.68%と2群間で差は認めなかった。RAS阻害薬の使用頻度も両群で差を認めなかった。尿アルブミン排泄において、エンパグリフロジン群で低下度が大きい傾向はあったが統計学的有意差は認めなかった。尿中L-FABP排泄は差を認めなかった。今後、低酸素誘導分子の変化をエンパグリフロジン群と対照群で比較するとともに、開始時および6ヶ月後の尿サンプルのエクソソーム解析を行ない、新規の糖尿病性腎臓病進展関連因子の探索を行なう予定である。