研究課題/領域番号 |
20K07799
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
奥村 伸生 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (60252110)
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研究分担者 |
樋口 由美子 信州大学, 学術研究院保健学系, 講師(特定雇用) (40757241)
平 千明 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (40779310)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フィブリノゲン / フィブリン / アミロイドβ1-42 |
研究実績の概要 |
フィブリノゲン(Fbg)は血液凝固・線溶系に関与するのみならず、細胞外マトリックスとして蛋白沈着・血管新生・創傷治癒・炎症などに関与していることが知られている。これまでに、Fbgはアルツハイマー病で脳に沈着するアミロイドβ1-42(Aβ)に結合することが報告されているが、先天性Fbg機能異常症(CFD)患者における異常FbgとAβの結合性は研究されていなかった。 令和2年度は、異常FbgとAβとの複合体形成能を研究した。初めに、健常人血漿から精製したFbg、合成Aβペプチド、抗Aβ抗体、POD標識抗マウスIgG抗体を用いてELISA測定系を様々な条件下で検証し、FbgとAβの結合性を確認する測定系(Fbgプレート)、精製Fbgに合成ペプチドGPRP/GHRPを添加し、Fbgをフィブリン(Fbn)様に構造変化させた測定系(Fbg+GPRP/GHRPプレート)、トロンビンにより生成したFbnを可溶化したフィブリンモノマー(FM)を使用した測定系(FMプレート)を構築した。これらの測定系を用いて、CFD由来の異常Fbg(Fbn重合反応やFbn構造に異常を来す8種類の変異;AαR16H、AαR16C、BβG15C、γR275H、γR275C、γN308K、γΔN319D320、γD364H)のAβとの結合性を評価した。 その結果、いずれの異常Fbgにおいても健常人Fbgと同程度にAβと結合することが認められ、健常人Fbgと比較してAβとの結合性が有意に上昇あるいは低下する変異部位は認められなかった。また、Fbg変異部位によるFbg、Fbg+GPRP/GHRP、FMプレートの違いによるAβの結合性の差も認められなかった。これらの結果から、今回研究対象とした8種類のFbg変異部位は、Fbg、Fbnいずれの構造においてもAβの結合性に影響を与える部位ではないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はほぼ予定通りに実施することができたが、研究結果は予想に反して、検討したFbg異常では異常部位による違いが検出できなかった。また、令和2年度の研究内容の一部は令和2年度中に国内学会で発表する予定であったが、実施できなった。このため、本報告内容は令和3年度の第68回日本臨床検査医学会学術集会で発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目である令和3年度は、創傷治癒の機能に着目して、血管内皮細胞・皮膚線維芽細胞の遊走能、管状構造形成能、形質転換能について研究する予定である。すでに細胞の培養準備を進めており、研究分担者は血管内皮細胞の培養経験を有していることから、当初の計画通り研究を実施可能であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の消耗品の購入により研究が遂行できたため、研究分担者分の助成金を次年度に繰越すことにした。繰り越し分は、次年度研究の細胞培養液を追加購入する予定である。
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