研究課題/領域番号 |
20K07799
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
奥村 伸生 信州大学, 学術研究院保健学系, 特任教授 (60252110)
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研究分担者 |
樋口 由美子 信州大学, 学術研究院保健学系, 講師(特定雇用) (40757241)
平 千明 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (40779310)
新井 慎平 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (70866053)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フィブリノゲン / フィブリン / 血管内皮細胞 / 皮膚線維芽細胞 / 遊走能 / 管状構造形成能 / 形質転換能 |
研究実績の概要 |
血管新生・創傷治癒などに必要とされるフィブリノゲン(Fbg)あるいはフィブリン(Fbn)における変異Fbg及び変異Fbg由来のFbnモノマー(FM)の機能について、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いて以下の3機能を検討した。 ①遊走能:FbgあるいはFM接着プレートにHUVECを培養し、発育後細胞の一部を剥がし、VEGF存在下で24時間培養し、遊走細胞数をカウントした。その結果、正常Fbg/FMでは非接着対照と比較して大きな差がなく、変異Fbgでは予測に反して増加傾向が観察された。 ②管状構造形成能:正常ヒト皮膚線維芽細胞を72時間培養後、HUVECをFbg/FM存在下で72時間培養し、管状構造の形成をマウス抗ヒトplatelet-endothelial cell adhesion molecule-1(PECAM-1)とALP標識抗マウスIgG抗体・BCIP/NBTで染色して、管状構造形成を観察した。その結果、BβG15CFbg添加において正常Fbgより分岐がなく、短く、太い構造が観察された。また、変異FM添加では、γR275H, γD364Hにおいて正常FMより短い構造が、AαR16Hでは長い構造が観察された。一方、BβG15Cでは分岐が少なく、短く、太い構造が観察された。 ③内皮間葉転換能(EndMT):FbgあるいはFM接着プレートにHUVECを培養後、TGFβ2を添加し48時間培養し、形態変化と細胞中間葉系マーカー(CDH2とvimentin)のmRNAを定量した。その結果、形態変化・mRNA定量とも、いずれの変異型FbgあるいはFMにおいても、正常FbgあるいはFMと比較して有意な差を認めなかった。 以上の実験結果より、変異FbgあるいはFMは正常FbgあるいはFMと比較して、HUVECの管状構造形成能(血管新生)に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の2年目の研究計画であった、フィブリノゲン(Fbg)あるいはフィブリン(Fbn)における変異Fbg及び変異Fbg由来のFbnモノマー(FM)の機能について、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いて、遊走能、管状構造形成能、形質転換能の3種を評価できた。
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今後の研究の推進方策 |
<令和4年度> 好中球のNETs形成能と単球のマクロファージ(Mφ)分化能 炎症に関係する機能として、感染症、血栓症、動脈硬化などで検出される好中球のNETs形成能と、感染初期に活躍するM1 Mφや抗炎症・免疫抑制に働くM2 Mφの単球からの分化能を以下の方法で評価する。 ①FbgあるいはFMコーティングプレートに正常ヒト好中球を播種し、LPSあるいはPMAで刺激しNETosis Imaging Assay Kitの試薬を添加し、6時間まで経時的に蛍光顕微鏡下で観察し、1時間ごとのNETs形成率の変化を求める。 ②FbgあるいはFMコーティングプレートに正常ヒト単球(CD14+)を播種し、GM-CSFあるいはM-CSFを添加して6日間培養し、それぞれM1 MφあるいはM2 Mφに分化したことを、培養上清のIL-12あるいはIL-10産生量を測定することにより評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
mRNA定量用試薬が2キット必要になると計画していたが、細胞培養が三重測定ができす二重測定としたために、1キットで間に合った。このため令和3年度の残額61,858円は次年度の研究で使用する細胞分化同定用抗体を1種類増やす計画である。
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