特にmicroRNAに焦点を当て、血管疾患の観点から認知症などの治療、予測、診断の戦略を構築するための研究に取り組みました。これまでの検討から、認知機能障害が生じた脳内で発現が上昇する可能性のあるmicroRNAを複数見つけており、それぞれの制御遺伝子を同定するために、バイオインフォマティクスなどの情報科学を駆使してきました。しかしながら、予測や診断法の開発に結びつく有用な標的microRNAまでたどり着くことが難しい状況が続きました。将来的に血中エクソソームmicroRNAを認知機能の診断バイマーカーとして実臨床で利用する計画でしたが、このためには様々な課題があります。その一つが疾患特異性の担保が難しいことです。これは、microRNAが複数の遺伝子発現を制御できるという点が裏目に出てしまっています。申請時当初は、複数のmicroRNAを組み合わせた指標で認知症などの予測・診断に結びつくバイオマーカーの開発も検討していましたが、従来から注目していたmicroRNAを単独指標としても十分に診断が可能である成果が出てきたため、その研究成果を論文としてまとめ、当該年度に報告しました。このような研究成果は、将来的に認知症の治療や予測、診断において大きな進展につながる可能性があります。特に、血管疾患と認知症の関連性を明らかにすることで、その治療法や予防策の開発につながることが期待されます。
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