研究課題/領域番号 |
20K07807
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
森 剛志 宮崎大学, 医学部, 助教 (40426565)
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研究分担者 |
佐藤 克也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (70398147)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プリオン病 / QUIC法 |
研究実績の概要 |
致死性の神経変性疾患であるプリオン病は、現時点において有効な治療法や早期診断法は存在しない。近年開発された異常型プリオン蛋白(PrP)試験管内増幅法(RT-QUIC法)はプリオン病罹患者の脳や髄液中に含まれる異常型PrPを検出可能とした高感度アッセイ系である。本研究では、プリオン病の早期診断を目標に、さらに微量の異常型PrPを検出する発展型RT-QUIC法を構築する。大量試料や高濃度試料から微量存在する異常型PrPを濃縮し、RT-QUIC法の感度を上げることで初期症状患者の診断を可能とする。RT-QUIC法は、他成分を多く含む高濃度試料からの微量異常型PrP検出を苦手とする。高濃度試料はQUIC反応を阻害するため、ここでは様々なビーズを用いて異常型PrPを他成分より分離し、その試料(濃縮PrP)を用いたRT-QUIC法を構築する。 令和2年度は、前段階としてどのビーズが本研究遂行に有用であるかを検討した。様々なビーズはRT-QUIC反応液中に混入させ、QUIC反応への影響を検討した(阻害、または偽陽性の出現)。検体にはクロイツフェルト・ヤコブ病罹患者脳乳剤及びマウス順化スクレイピーChandler株感染脳乳剤を用いた。結果、ビーズ存在化において若干の蛍光強度減少がみられたが偽陽性等の出現はみられなかった。ビーズ有無におけるシード活性(SD50/g) に大差はみられなかった。次に、脳乳剤を晒したビーズ を用いてRT-QUIC法を試みた。インキュベートした各々のビーズはリンス後、RT-QUIC法に用いたところ、数種のビーズにて偽陽性が観察された。 今後は、偽陽性を抑える条件を検討する。また、高濃度他成分サンプルや血液成分の代替え実験として高濃度のFBSを用いる。ビーズはFBSに段階希釈したプリオン発症脳乳剤を混合させ、同様の実験を行い、最適条件を決定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、「ビーズを用いたRT-QUIC法の最適条件」を決定させることを目標としてきた。まず、いくつかの金属ビーズを用いて、従来のRT-QUIC法の反応に対して影響を与えるか検討し、最適金属ビーズの種類を選別した。また今年度の計画予定では、プリオン感染脳乳剤を用いてスパイクテストを行うとしていた。健常マウスの脳乳剤に段階希釈したプリオン発症脳乳剤(マウス順化スクレイピーChandler株)を混合させた飼料を使用する計画である。今回は、クロイツフェルト・ヤコブ病罹患者脳乳剤をビーズとインキュベートすることで、それらビーズがQUIC法に有用であるかを検討した。結果、偽陽性が検出されることはあるが、QUIC反応においては陽性結果が得られた。現在、偽陽性を抑える条件を検討しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、今年度、ビーズを用いたQUIC反応時における偽陽性を抑える条件を決定する。また、プリオン感染脳サンプルにおける異常型PrPを検出できる最高脳乳剤量と最低異常型PrP濃度を調べる。 スパイクテストは、高濃度他成分サンプルや血液成分の代替え実験として高濃度のFBSを用いる。ビーズはFBSに段階希釈したプリオン発症脳乳剤を混合させ、同様の実験を行い、最適FBSの濃度及び脳乳剤の最高希釈率を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、RT-QUIC法の基質として多くリコンビナント蛋白を要する。令和2年度に購入予定であったNi-NTAスーパーフローアガロースはそれらリコンビナント蛋白の精製に有用である。しかしながら、現時点では当研究室にリコンビナント蛋白のストックがあったことから、今年度は購入しなかった。今後、本研究を遂行する上でさらに多くのリコンビナント蛋白を必要となるため、次年度購入することに変更した。
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