現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はR3hdmlの臨床的意義を明らかにする目的でR3hdmlに対する自己抗体測定を行った。【方法】 研究同意が得られた健常者(84名)、糖尿病腎症(145名)、糸球体硬化症(32名)、糸球体腎炎(123名)を対象とした。R3hdmlタンパクの一部をGST (glutathione S-transferases)-融合タンパクとして大腸菌で発現させ、glutathione-Sepharoseを用いてアフィニティ精製をした。この精製タンパク質を抗原として、glutathione-donor beadsとanti-human-IgG-acceptor beadsを用いてAlpha -LISA法により血清抗体レベルを測定した。【結果】血中抗R3hdml抗体は健常者(9,483±5,646)に比し、糖尿病腎症(15619±10783, p<0.001)、糸球体硬化症(17553±10783, p<0.001)、糸球体腎炎 (15147±10602, p<0.001)と慢性腎臓病患者において有意に抗体レベルが高かった。健常者の平均値+2SDをカットオフに値に設定した時の陽性率は糖尿病腎症(18.7%)、糸球体硬化症(34.4%)、糸球体腎炎(24.4%)であった。これまでの検討では、R3hdmlは腎糸球体ポドサイトから分泌され、TGF-βの細胞内シグナルであるp38MAPKのリン酸 化を抑制し、ポドサイトのアポトーシスを抑制することを明らかにして報告した(J Mol Med (Berl). 2021 Feb 23)。今年度の検討により、Rh3dmlに対する自己抗体がR3hdmlの機能低下をもたらし、腎症の発症・進展に関与する可能性が示唆された。今後はこれらの知見を骨格筋研究にも生かしてゆく予定である。
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