研究課題
細胞から分泌されるエクソソームは由来する細胞の特徴を反映することから、体液中のエクソソームは新たなタイプのバイオマーカーとして期待されている。本研究では、アルツハイマー病患者の血清から単離したエクソソームのプロテオーム解析を行い、新規診断マーカーの候補を同定する。続いて、マーカーの検出システム構築した後に多検体で解析を行い、アルツハイマー病・MCI(軽度認知機能障害)と対照症例の鑑別における臨床的有用性を検証することを目的としている。前年度までに、アルツハイマー病患者および健常者の血清プール検体からフォスファチジルセリン(PS)アフィニティ法により精製したエクソソームに対して、安定同位体標識法であるiTRAQ法を用いた定量プロテオーム解析によりマーカー候補を選出した後、検出系の構築と複数検体での評価を行ってきた。さらには血清由来エクソソーム精製方法において、PSアフィニティ精製法に代わる方法として別のアフィニティ精製法、サイズ排除クロマトグラフィー法などを検討し、より偏りのないエクソソーム精製法の開発を行ってきた。最終年度は開発したエクソソームの精製法の中から最も良いと考えられた、エクソソームマーカータンパク質に対する抗体により精製する方法を用いて、アルツハイマー病患者および同年代の健常者の各10人の血清より個別にエクソソームを精製し、プロテオーム解析を行い、ラベルフリー定量解析によりアルツハイマー病患者で変化するタンパク質を探索した。その結果、アルツハイマー病患者血清由来エクソソームで、健常者と比較して1.5倍以上変動する13個のタンパク質を同定した。今後はこれらのマーカー候補について複数検体での確認と、臨床的有用性の検証を行い、アルツハイマー病の血清による鑑別方法の開発につなげていく。
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