研究課題/領域番号 |
20K07820
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金澤 素 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70323003)
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研究分担者 |
福土 審 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80199249)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 過敏性腸症候群 / 脳腸相関 / ストレス / 早期環境 |
研究実績の概要 |
ストレス関連疾患である過敏性腸症候群(IBS)の病態は完全には解明していない。近年、幼少期における親の養育行動が子どものストレス脆弱性に影響し、IBSの発症・病態形成に寄与しているのではないかと推測されるようになった。しかし、IBS患者に認められる脳腸軸のストレス反応性の異常に対して早期環境がどのような役割を果たしているのかについては十分明らかにされていない。 本年度はIBSを含む反復性腹痛(reccurent abdominal pain: RAP)患児の母親は非RAP児の母親に比較してIBS症状を有しやすく、養育行動の違いがあるという仮説を検証した。 RAP患児とその母親44組と非RAP児とその母親211組を対象とし、子どもの症状(Child Symptom Checklist: CSCL)と日常行動様式(Child Behavior Checklist: CBCL)、子どもに対する養育態度(Parental Bonding Inventory: PBI)、症状対処行動(Adult Response to Child Symptoms: ARCS)、母親自身のIBS症状を調査票によって評価した。 RAP患児は非RAP児よりも消化器症状(7.5±4.1 vs. 0±0, p<0.01) だけでなく、消化器外症状 (9.9±5.8 vs. 3.6±3.5, p<0.01)も有意に多く認められた。RAPの母親は非RAPの母親よりもIBS診断率が高く (42.5% vs. 20.4%, p<0.01)、子どもの症状に対する反応を小さくしようとした (8.9±4.6 vs. 5.6±3.4, p<0.01) 。その養育行動はIBS症状を有するRAP患児の母親に顕著に認められた。 これらの結果は、IBSを有する母親は子どもの慢性腹痛症状の経過をよく理解しているためかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、計画通り反復性腹痛(RAP)患児と非RAP症例のデータを集積することができた。その結果、RAP患児に対する母親の養育行動の特徴をある程度評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、引き続き反復性腹痛患児の募集を実施する。加えて、新たに成人の過敏性腸症候群(IBS)患者と非IBS症例の募集を開始し、幼少期に親から不適切な養育を受けた経験が多いかどうか評価する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響のために多くの国内外での学会・研究会が中止またはリモート開催に変更されたため、旅費の支出が当初の見込みより減少した。 次年度にはその額を開催予定の学会・研究会への参加旅費だけでなく、データ収集ならびに入力のため物品費と消耗品に一部充当する計画である。
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