研究課題/領域番号 |
20K07821
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
窪田 哲朗 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (90205138)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / 神経精神ループス / 抗DNA抗体 |
研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)の病態形成には,抗DNA抗体をはじめとする種々の抗核抗体が関わっている可能性が指摘されている。しかし,難治性病態の一つである神経精神ループス(NPSLE)と抗核抗体との関わりについては知見が少なく,不明の点が多い。今年度は抗DNA抗体がNPSLEの病態形成に関わる可能性について重点的に検討した。 Wistar rat胎児脊髄後根神経節から神経細胞を分離し,マウスモノクローナル抗DNA抗体2C10, H241, WB-6を添加し,37℃で30分から20時間培養した。洗浄,固定,透過処理を行い,蛍光標識抗マウスIgG抗体で染色した。その結果,抗DNA抗体が神経細胞に取り込まれることが明らかになった。2C10, H241は核まで侵入したが,WB-6は細胞質に留まった。アイソタイプコントロールIgGは細胞内に取り込まれなかった。さらに,抗DNA抗体を取り込んだ神経細胞では死細胞の割合が多くなる傾向もみられたが,この点に関しては実験条件によって必ずしも安定した結果が得られておらず,さらなる検討が必要である。 このほか,統合失調症の患者血清の一部に,神経のシナプスを形成する接着分子NCAM1に対する自己抗体が検出され,そのような抗体が動物実験で統合失調症様の症状を誘発することを観察し,報告した。 以上のように,膠原病の中枢神経病態や,精神疾患の一部における自己免疫現象の関わりが少しずつ明らかになっているが,さらに検討を要する課題も多い。これらの難治性病態の病態形成機構の解明が進展すれば,新しい検査法や治療法の開発にもつながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経細胞およびアストロサイトを用いた実験を行なっているが,神経系の細胞は培養条件が難しく,安定した実験結果が得られずに苦労している。問題点を検討しながら少しずつ前進しているが,抗DNA抗体と神経精神ループスとの関連に関しての論文発表までには,今しばらく時間がかかる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
抗DNA抗体が中枢神経系の細胞に及ぼす効果に関して,引き続き検討を重ね,論文発表できるような実験結果を得ることを目指す。併せて,これまで検討してこなかった抗DNA抗体が好中球に及ぼす効果についても検討を開始している。この点に関しても,学会発表および論文発表ができるような実験結果を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に用いる神経系細胞の扱いに慣れていなかったため,また新型コロナ感染症感染防止対策として研究室への入室が制限された時期があったため,実験の回数が想定より少なくなり,研究の進捗がやや遅れている。現在これらの問題点は解消されつつあり,次年度中に成果をまとめることを目指して研究を進めることとしている。
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