研究課題
全身性エリテマトーデス(SLE)は20歳から40歳前後の女性に好発する自己免疫疾患で,厚生労働省の指定難病の一つであり,約6万人が登録されている.発熱,皮疹,関節炎,漿膜炎,糸球体腎炎,精神神経症状など多彩が症状を呈し,血液検査では様々な自己抗体が検出される.特に抗DNA抗体が本疾患に特異性が高く,疾患活動性の指標ともなるが,SLEの病態形成にどのように関わっているかについては,まだ不明な点が多い.そこで本研究は,抗DNA抗体のSLEの病態形成上の役割を明らかにすることを目的として計画された.先行研究で私たちは,リン脂質とも交差反応するモノクローナル抗DNA抗体WB-6が,単球に取り込まれて組織因子の発現を誘導し,血栓形成傾向をもたらすことを発表した(Virachith et al. 2019).この分子機構について本研究でも引き続き検討を加え,この場合の単球の活性化には主としてToll-like receptor 9の経路が関わっていることを証明して発表した(Saito et al. 2020).また,別の先行研究で2本鎖(ds)DNAに特異的なモノクローナル抗体2C10は単球に取り込まれて,末梢血単核球にIFN-alpha,IFN-beta,TNF-alphaなどのサイトカインの産生を誘導することを明らかにした(Inoue et al. 2020).本研究ではこれらの先行研究をさらに発展させて,抗DNA抗体が中枢神経系の細胞にも取り込まれるか否かを検討した.ラット胎児から得たアストロサイトをWB-6,2C10などと共に培養した結果,WB-6は細胞質に,2C10は核に取り込まれることが観察された(論文投稿中).この結果は,SLEに見られる精神神経症状(NPSLE)の病態にも抗DNA抗体のエンドサイトーシスが関わっていることを示唆する重要な知見と考えられる.
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Brain, Behavior, and Immunity
巻: 111 ページ: 32~45
10.1016/j.bbi.2023.03.028