研究課題/領域番号 |
20K07822
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
樋口 由美子 信州大学, 医学部, 講師(特定雇用) (40757241)
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研究分担者 |
奥村 伸生 信州大学, 学術研究院保健学系, 特任教授 (60252110)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シトルリン化フィブリノゲン / NETs / PAD / がん |
研究実績の概要 |
好中球細胞外トラップ(NETs)のマーカーとして、シトルリン化ヒストンH3(C-H3)の測定系を試みていたが、長期間保存されている血清を測定するうえで、シトルリン化ヒストンタンパクの保存安定性が懸念された。そこで、別のNETsマーカーとされているMyeloperoxidase-DNA(MPO-DNA)複合体の測定系を構築した。基礎的な検討の結果、MPO-DNA複合体は保存安定性に優れており、長期保存された検体のNETsを検出するうえで有用なマーカであることが分かった。また、NETs形成に伴いフィブリノゲン(Fbg)がシトルリン化されるかどうか、in vitroの実験系を構築し検証を行った。好中球をPhorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)で刺激して人工的にNETsを形成させたところ、添加したFbgは有意にシトルリン化され、この反応はNETosis阻害剤、Peptidylarginine deiminase(PAD)阻害剤によって抑制された。PMA添加後の培養上清中シトルリン化Fbg(C-Fbg)とMPO-DNA複合体を時系列で測定したところ、NETsが生じてからFbgがシトルリン化されるまでには一定の時間が必要であることが分かった。 PADが腫瘍により発現していること、またNETsががん転移と関係しているとの報告もあることから、複数のがん種における患者血清を用いてシトルリン化-Fbg(C-Fbg)、MPO-DNA複合体を測定し検討したところ、がん種によって健常人と比して有意にC-Fbgの上昇が認められるものがあった。しかし、MPO-DNA複合体の上昇は認められなかったことから、現時点でNETsとの関係は見いだせていない。引き続き検体数を増やして検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の課題であったC-H3に代わるNETsマーカーの測定系の構築、in vitroでのNETsによるFbgのシトルリン化の証明は達成できた。当初の計画であったがんにおけるC-Fbgの解析については、まだ検体数が少ないがん種があり引き続き検体の収集が必要であるため、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きがんの症例数を収集できるよう、共同研究部署との連携を含め努力する。C-Fbgと他の検査データの関係について統計解析を行う。また、凝固線溶異常を呈する症例についても検討し、臨床検体におけるC-Fbg測定意義について検討を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定通りの使用であったが、若干研究用品を安価に入手できたため次年度使用額が生じた。令和4年度経費と合わせて消耗品購入費用として使用する予定である。
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