研究課題
マクロファージによるアポトーシス細胞の貪食は、エフェロサイトーシスと呼ばれ、組織修復や炎症の収束における重要な機能のひとつである。エフェロサイトーシスが障害されると、アポトーシス細胞の処理が損なわれ、2次的なネクローシスが誘導され、炎症と組織傷害が増悪する。エフェロサイトーシスの障害が喘息などの気道炎症で観察されたことが報告されている。本研究では傷害組織がIL-4やIL-5が中心的な役割を担う2型免疫応答の環境にある場合の修復機構の解析を行うことを目的とする。2021年度は、2型優位の免疫応答を示すNC/Ngaマウスを用いて、エフェロサイトーシスと2型免疫応答の関与について検討した。BALB/c マウスとNC/Nga マウスより骨髄由来マクロファージ (bone marrow-derived macrophages, BMDM)を樹立し、ラテックスビーズの貪食能を評価した。その結果、NC/NgaマウスのBMDMは、BALB/cマウスのBMDMと比較して、ラテックスビーズの貪食量が有意に低下していた。次に、BMDMによるアポトーシス誘導Jurkat T細胞のエフェロサイトーシスを評価した。BMDMをCFSE標識したアポトーシス誘導Jurkat T細胞と2時間または24時間共培養し、CFSE陽性BMDMの割合を解析した。BALB/cマウスと比較して、NC/Ngaマウスでは、24時間の共培養によって、BMDMによるアポトーシス誘導Jurkat T細胞のエフェロサイトーシスが減少した。しかし、2時間の共培養では減少しなかった。以上の結果より、NC/Ngaマウス由来のBMDMでは、BALB/cマウス由来のBMDMと比較して、持続的なエフェロサイトーシスが損なわれている可能性が示唆され、マクロファージの修復機構は2型免疫応答に関与する可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
2020年度から引き続き、パパイン、LPS投与による肺傷害モデルを用いたエフェロサイトーシスの評価を行い、パパイン、LPS投与による肺傷害モデルにおいてどちらも2型免疫応答有意のNC/Ngaマウスでエフェロサイトーシスが低下するように思われた。また、ex vivoでのエフェロサイトーシスを評価する系を作製し、NC/Ngaマウスを用いて、骨髄由来マクロファージを樹立し、ラテックスビーズの貪食能とエフェロサイトーシスの評価を行った。NC/NgaマウスではBALB/cマウスと比較して貪食能、エフェロサイトーシスともに減少していることが明らかとなった。
最終年度では肺胞マクロファージを用いたエフェロサイトーシスの検討に加え、各種炎症条件下でのエフェロサイトーシスの評価をin vivoで行う。引き続きNC/Ngaマウスを用いて、短期的あるいは長期的なパパイン点鼻による気道炎症モデルを作成し、経時的にエフェロサイトーシスを評価する。また、エフェロサイトーシスを制御する分子について、気道炎症モデルマウスの肺胞洗浄液中よりマクロファージや好中球などをソーティングし、修復機転となる分子機構について分子レベルでの検討を進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (7件)
Experimental Cell Research
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