研究課題/領域番号 |
20K07827
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
清水 孝洋 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (00363276)
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研究分担者 |
齊藤 源顕 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (60273893)
東 洋一郎 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 講師 (80380062)
清水 翔吾 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (90721853)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ストレス / 脳 / 頻尿 / 膀胱機能 / ニコチン受容体 / 硫化水素 / GABA |
研究実績の概要 |
ストレス曝露による頻尿誘発、膀胱機能障害における頻尿症状がストレス曝露により増悪する事が古くから報告されているものの、その機序についてストレスを受容する脳との関連で明らかにした報告は少ない。代表者らはこれまで、排尿促進に関与する脳内分子として神経ペプチドのボンベシン(BB)および一酸化窒素を、排尿抑制に関与する脳内分子としてニコチン受容体(nAChR)および硫化水素(H2S)を、それぞれ同定した。そこで令和2年度は、脳内nAChRおよびH2Sによる排尿抑制機序を解析した。 実験にはウレタン麻酔下の雄性ラットを用い、脳定位固定装置に固定した条件下で側脳室に種々の薬物を投与した。排尿機能は膀胱へ挿入したカテーテルへ生食を持続注入(12 ml/h)した際の膀胱内圧変化から評価した。 結果、(1)nAChR刺激薬エピバチジン(EP)脳室内投与による排尿間隔(排尿頻度の指標)延長はα7型nAChR遮断薬MLA、GABAA受容体遮断薬SRおよびGABAB受容体遮断薬SCHの脳室内前処置により有意に抑制された。またα7型nAChR刺激薬PHA脳室内投与はEPと同様の排尿間隔延長を誘発した。(2)H2SドナーGYY4137脳室内投与による排尿間隔延長はSRおよびSCHの脳室内前処置により抑制された。 以上より、(1)脳内α7型nAChR刺激は脳内GABA神経系を介して排尿を抑制する事、(2)脳内H2Sは脳内GABA神経系を介して排尿を抑制する事、が明らかとなった。またこれら排尿抑制にはGABAA・GABAB両受容体が関与する事が示唆された。これら成果は、ストレス曝露による頻尿誘発・膀胱機能障害に伴う頻尿症状増悪に対し、脳内α7型nAChRおよび脳内H2Sが新たな治療標的となる可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の研究計画にあった、脳内nAChR刺激による排尿抑制の脳内機序に関する脳内nAChRサブタイプおよび脳内GABA神経系に着目した検討、については、上述の検討結果を論文発表まで漕ぎ着けた。一方で、脳内BBによる排尿促進の脳内機序に関する脳内GABA及びグルタミン酸(Glu)神経系に着目した検討については、現状検討が進んでいない。しかしながら、令和3年度目以降に用いる予定の水回避ストレス(WAS)誘発性頻尿モデルラットの作成条件検討については概ね終了し、ストレス曝露による頻尿誘発に対する薬物投与の影響の検討準備は整ってきた。加えて、本計画には当初加えていなかった、脳内H2Sに着目した検討の結果得られた上記成果を論文発表まで漕ぎ着けた。 以上、当初の予定通りに進んだ項目、予定通りに進まなかった項目、予定外の検討により新しい知見が得られた事、を総合的に勘案し、進捗状況を上記の様に判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)進捗状況欄に記載した、脳内BBによる排尿促進の脳内機序について、脳内GABA及びGlu神経系に着目して明らかにする。 (2)α7型nAChR刺激薬及びBB受容体遮断薬の脳室内前投与がWAS曝露ラットの頻尿に及ぼす影響を明らかにする。 (3)予備実験にて、ストレス反応に関与する脳内分子・コルチコトロピン放出因子(CRF)脳室内投与が排尿を促進する傾向を認めたので、再現性検討ならびにCRFによる排尿促進の脳内機序を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の成果を発表する予定であった令和2年度の学会の多くがCOVID-19感染症蔓延の影響で開催中止あるいはオンライン開催となった関係で、旅費として計上していた予算がほとんど執行できなくなった。その分を物品費に回したものの、当初の予算通りの執行ができず、残金が生ずる事となった。 同残金については、令和3年度開催予定の学会の開催形式にもよるが、オンサイト開催が多くなれば学会参加の旅費に充て、令和2年度と同様にオンライン開催が主流となれば物品費に充てる予定である。
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