現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は杏林大学病院もの忘れセンターを受診した認知機能障害患者247人(男性89人、女性158人、平均年齢80.3±4.1歳)を対象に、以下の検査を行い、データを収集した。 ・認知機能評価:Mini-mental state examination (MMSE), MoCA-J(一部のみ), Geriatric depression scale (GDS15) ・フレイル評価:①Friedの基準日本語版(J-CHS)、②Edmonton frail scale(EFS)基準 ・身体機能評価ほか: 基本的ADL、手段的ADL、服用薬剤(数)、並存疾患(数)、身長、体重、血圧、下腿最大周囲長、四肢別筋量(バイオインピーダンス法)、サルコペニアの判定、握力、通常歩行速度、Timed Up&Go テスト、開眼片脚立ち時間、5回椅子立ち上がり時間(一部のみ)、継ぎ足歩行、ファンクショナルリーチ、重心動揺検査、転倒リスク指標、転倒歴、老年症候群保有数、MNA-SF 、Lubben social network scale (LSNS-6, 社会性の評価、一部のみ)、MRI画像所見(FLAIR画像による大脳白質病変の判定量評価、ラクナ梗塞)、経頭蓋超音波ドプラ(TCD)による脳血流動態、大動脈スティッフネス(baPWV)、血中Hb, 白血球数と分画, Alb, T-chol, BDNF, グレリン, カルニチン, EPA, DHA, アラキドン酸 以上をデータベース化した後、統計処理を行い、コグニティブフレイルを判定した。そして次に、コグニティブフレイル群とMCI単独群の間で、身体機能その他のデータの比較を行った(結果は概要に記載)。
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今後の研究の推進方策 |
今年度まだ評価できていないものとして、オーラルフレイルの評価(舌圧、オーラルディアドコキネシス、口腔水分測定、反復唾液嚥下テスト、改定水飲みテスト)、大脳白質病変の定量評価(Fusion)があり、これを次年度進める。また、すべてのデータが統計解析に足るほど十分ではないため、欠損を補うべく、症例の登録を増やしていく。特に、コグニティブフレイル群とMCI単独群での大脳白質病変や脳血流動態、各種血管危険因子、動脈硬化指標、栄養状態の比較を重要視している。さらに、MCIを可能な限りアルツハイマー等の変性性疾患が背景にあると思われる病型と、ラクナ梗塞の多発や白質病変が強い血管性の病型に分類し、両病型とコグニティブフレイルとの関係についても調べる。 今年度は横断的解析のみであったが、次年度は一部の症例について予後調査を行う。すなわち、認知症への進展、フレイルの進行(J-CHS項目数の増加)、各種身体機能の変化、要介護状態の発生と変化、手段的ADL障害の進展、転倒・骨折の発生について調べ、悪化した場合リスク要因を抽出する。これは次々年度にわたって継続的に行う。 現在、コグニティブフレイルに対する介入研究の準備を進めている。ひとつはdual exerciseであるコグニサイズによる予防(フレイル進行予防と認知症進行予防)であるが、生憎、現在新型コロナウィルス蔓延状況にあるため、コグニサイズを実施することができていない。ワクチン接種者が増えてコグニサイズが実施できるようになり次第、希望者を募って研究を開始する予定である。もう一つは薬物介入(EPA, DHA, カルニチン, 抗酸化薬)±筋力強化運動介入であり、これは2アームによる4群の介入を予定している。目標は各群15人で、無作為に割付け3か月間の介入効果を調べる予定である(現在、準備中)。
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