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2020 年度 実施状況報告書

コグニティブフレイルの臨床的意義解明のための総合研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K07832
研究機関杏林大学

研究代表者

神崎 恒一  杏林大学, 医学部, 教授 (80272540)

研究分担者 海老原 孝枝  杏林大学, 医学部, 准教授 (30396478)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードMCI / フレイル / コグニティブフレイル / 低栄養 / 動脈硬化
研究実績の概要

杏林大学医学部付属病院もの忘れセンターを受診し、軽度認知障害(mild cognitive impairment; MCI)と診断した患者247人(男性89人、女性158人、平均年齢80.3±4.1歳)を対象として、フレイルの評価をLinda Friedらの方法(J-CHS基準)を用いて行った。CHS基準では5項目のうちいくつ該当するかで0~5の6段階に分類し、0を健常、1~2をプレフレイル、3以上をフレイルと評価する。対象者247人のうち健常は47人(19%)、プレフレイル145人(59%)、フレイル55人(22%)であり、コグニティブフレイルの操作的定義(MCI+フレイル)に基づきコグニティブフレイルな者は22%に及ぶことがわかった。
次に、コグニティブフレイルの臨床的特徴を調べるために、コグニティブフレイル56人と、この集団と年齢をマッチさせたMCI単独(非フレイル)者168人との間で、属性や各種測定値の比較を行った。その結果、コグニティブフレイル者では日中の活動量(LSNS-6)が低く、うつ傾向(GDS15)が高く、転倒リスクや老年症候群保有数が高いことが判明した。そのほか、低栄養状態(血清Alb濃度、Hb、CONUT Score、MNA-SFがすべて
低値)にあること、さらに動脈硬化関連指標で、大動脈スティッフネス(baPWV)高値、5個以上のラクナ梗塞を有する者の割合が高いことが判明した。一方、大脳白質病変(虚血性変化; PWVとDWMH)の程度には有意な違いは見られなかった。
また、異なる対象者で経頭蓋超音波ドプラ(TCD)による脳血流動態を、MCI単独群とコグニティブフレイルで比較したところ、中大脳動脈血流速度、pulsatility index(流れやすさ)のいずれにも有意な違いは認められなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は杏林大学病院もの忘れセンターを受診した認知機能障害患者247人(男性89人、女性158人、平均年齢80.3±4.1歳)を対象に、以下の検査を行い、データを収集した。
・認知機能評価:Mini-mental state examination (MMSE), MoCA-J(一部のみ), Geriatric depression scale (GDS15)
・フレイル評価:①Friedの基準日本語版(J-CHS)、②Edmonton frail scale(EFS)基準
・身体機能評価ほか: 基本的ADL、手段的ADL、服用薬剤(数)、並存疾患(数)、身長、体重、血圧、下腿最大周囲長、四肢別筋量(バイオインピーダンス法)、サルコペニアの判定、握力、通常歩行速度、Timed Up&Go テスト、開眼片脚立ち時間、5回椅子立ち上がり時間(一部のみ)、継ぎ足歩行、ファンクショナルリーチ、重心動揺検査、転倒リスク指標、転倒歴、老年症候群保有数、MNA-SF 、Lubben social network scale (LSNS-6, 社会性の評価、一部のみ)、MRI画像所見(FLAIR画像による大脳白質病変の判定量評価、ラクナ梗塞)、経頭蓋超音波ドプラ(TCD)による脳血流動態、大動脈スティッフネス(baPWV)、血中Hb, 白血球数と分画, Alb, T-chol, BDNF, グレリン, カルニチン, EPA, DHA, アラキドン酸
以上をデータベース化した後、統計処理を行い、コグニティブフレイルを判定した。そして次に、コグニティブフレイル群とMCI単独群の間で、身体機能その他のデータの比較を行った(結果は概要に記載)。

今後の研究の推進方策

今年度まだ評価できていないものとして、オーラルフレイルの評価(舌圧、オーラルディアドコキネシス、口腔水分測定、反復唾液嚥下テスト、改定水飲みテスト)、大脳白質病変の定量評価(Fusion)があり、これを次年度進める。また、すべてのデータが統計解析に足るほど十分ではないため、欠損を補うべく、症例の登録を増やしていく。特に、コグニティブフレイル群とMCI単独群での大脳白質病変や脳血流動態、各種血管危険因子、動脈硬化指標、栄養状態の比較を重要視している。さらに、MCIを可能な限りアルツハイマー等の変性性疾患が背景にあると思われる病型と、ラクナ梗塞の多発や白質病変が強い血管性の病型に分類し、両病型とコグニティブフレイルとの関係についても調べる。
今年度は横断的解析のみであったが、次年度は一部の症例について予後調査を行う。すなわち、認知症への進展、フレイルの進行(J-CHS項目数の増加)、各種身体機能の変化、要介護状態の発生と変化、手段的ADL障害の進展、転倒・骨折の発生について調べ、悪化した場合リスク要因を抽出する。これは次々年度にわたって継続的に行う。
現在、コグニティブフレイルに対する介入研究の準備を進めている。ひとつはdual exerciseであるコグニサイズによる予防(フレイル進行予防と認知症進行予防)であるが、生憎、現在新型コロナウィルス蔓延状況にあるため、コグニサイズを実施することができていない。ワクチン接種者が増えてコグニサイズが実施できるようになり次第、希望者を募って研究を開始する予定である。もう一つは薬物介入(EPA, DHA, カルニチン, 抗酸化薬)±筋力強化運動介入であり、これは2アームによる4群の介入を予定している。目標は各群15人で、無作為に割付け3か月間の介入効果を調べる予定である(現在、準備中)。

次年度使用額が生じた理由

2020年度は新型コロナウイルス蔓延状況のため、予定していた海外学会に行くことができず、旅費と参加費を使用しなかった。次年度海外に行ける状況であれば研究成果の発表と最新の情報を得るために海外学会に参加する予定である。2020年度は最小限のスタッフで研究データを収集したので人件費を使用しなかったが、次年度はフレイル関連検査継続、及びデータ整理のために人件費を使用する予定である。
消耗品として舌圧測定器を使用する際の舌圧プローブ、検体分析プラスチック用品、データ保存のためのUSBメモリや印刷用消耗品等を購入予定である。その他として超音波脳血流装置のリース代、学会参加費の計上を予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] 認知症とサルコペニア2020

    • 著者名/発表者名
      神崎恒一
    • 雑誌名

      Medical Practice

      巻: 37 ページ: 739~743

  • [学会発表] 認知機能と身体的フレイルとの関連2020

    • 著者名/発表者名
      神崎恒一
    • 学会等名
      第62回日本老年医学会学術集会
  • [学会発表] 呼吸筋のサルコペニアと低栄養は高齢者肺炎発症と再発の危険因子である~横断コホート研究~2020

    • 著者名/発表者名
      4.岡崎達馬,鈴嶋よしみ,宮武ミドリ,永井久美子,庄司真美,小松理世,神崎恒一,出江紳一,海老原孝枝
    • 学会等名
      第62回日本老年医学会学術集会
  • [学会発表] 高齢者におけるフレイル・サルコペニアとその対策2020

    • 著者名/発表者名
      神崎恒一
    • 学会等名
      第32回日本老年医学会中国地方会
  • [学会発表] コグニティブフレイルに意義あり2020

    • 著者名/発表者名
      神崎恒一
    • 学会等名
      第7回日本サルコペニア・フレイル学会大会

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公開日: 2021-12-27  

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