研究実績の概要 |
杏林大学病院もの忘れ外来に来院したコグニティブフレイル(以下コグフレと略)者の臨床的特徴について以下の知見を得た。 1. 軽度認知障害(MCI)と診断された224名のうち、MCI単独者は168名(75%)、コグフレ者は56名(25%)であり、70歳代で18%、80歳代で38%がコグフレであった。MCI群に比較してコグフレ群は老年症候群の保有数が多く、日中の活動量が低値で、栄養状態が悪く(血中アルブミン、ヘモグロビン、CONUTスコアが低値)、動脈スティフネスが強く(PWV高値)、ラクナ梗塞が多発していた。2. コグフレ者(63名)はMCI単独者(165名)に比べて、年齢が高く、認知機能(MMSE)が低値、基本的ADL, 手段的ADLが低く、うつ傾向が高いこと、糖尿病の罹患者が多く、動脈スティフネスが強く(PWV高値)、MRIでの大脳白質病変が強い傾向があることがわかった。一方、経頭蓋ドップラーで脳血流動態を評価したが、中大脳動脈の流速やコンダクタンス、レジスタンスには両群で差は認められなかったほか、SPECTでの評価した大脳平均血流量にも差は認められなかった。3. 新型コロナウィルス感染症の蔓延が始まった2020年第3四半期(7~9月)にもの忘れ外来を初診した患者(517名)は、他の時期の初診患者と比較して、フレイルな高齢者が多く、意欲の指標、中でも食欲と活動意欲に低下がみられた。またこれと関連して、疲労感や体重減少者の割合が有意に高かった。4. 口腔機能を評価した患者71名で、①男女で加齢に伴う口腔機能の落ち方が異なること、②栄養状態の低下は舌圧の低下と関連すること、③栄養状態の低下は筋量の低下と関連が強く、男性では握力や舌圧と相関すること(女性では相関は見られない)、④コグフレ者は自覚がなくても舌圧が低く、栄養状態がよくないことが明らかとなった。
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