研究課題/領域番号 |
20K07834
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大久保 光夫 順天堂大学, 大学院医学研究科, 先任准教授 (40260781)
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研究分担者 |
荒木 慶彦 日本大学, 016, 上席研究員 (70250933)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 輸血 / CD163 / ヘモグロビン / へプシジン |
研究実績の概要 |
溶血により生じた遊離ヘモグロビンは細胞毒性を持つ.遊離ヘモグロビンは異型輸血のみならず保存血輸血でも生成・輸注される.今まで遊離ヘモグロビンの生体内での処理はハプトグロビンと結合する段階しか知られていなかったが,ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体が形成されて,それがヘモグロビンスカベンジャー受容体(以下CD163)を介してマクロファージに処理されていることが分かってきた.さらに,CD163はマクロファージ内だけではなく血清中にも可溶性CD163として存在していることが最近報告された. 我々はこの可溶性CD163分子はマクロファージ膜から離れていても遊離ヘモグロビンと結合して細胞障害作用を抑えることができる分子であると考えているが,輸血を受けた患者さんにおける値の変化についての報告はないため,頻回輸血を受けている患者さんの血清を用いてsCD163をELISAにて経時的に6点で測定した.その結果,3か月間でHb4.8g/dLから7.5g/dLまで増加するように輸血された患者さんの場合,輸血前のsCD163の値を1.0(コントロール換算で約1,700pg/mL)とすると,初回輸血後に1.84に急上昇,その後,0.64に低下した.従来の報告ではsCD163は炎症とともに増加することはあるが,著明に低下した病態の報告はなかった.我々の結果はsCD163が血清中に何らかの刺激で増加したのち,遊離ヘモグロビンと結合して処理されたとものと考えられる. この解析では血清鉄の利用に関係する分子であるへプシジンも同時に測定した.すると興味深いことにsCD163の変動と反比例する値を示した.これにはsCD163とへプシジンが何らかの相互作用あるいは影響を受けていることを示唆している.今後はその相互関係についての解析を進めて行く予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナパンデミックによる移動の制限は研究者のみならず検体提供および採取の制限にまで影響を及ぼした.また,海外からの試薬の調達に遅延があった.そこで,新たな検体を求めるのではなく,既存の検体を使って,sCD163以外の鉄代謝にかかわる分子であるへプシジンのELISAによる測定を行った.これによって,新たな知見を得たが,対象とする分子が増えたため,全体的に進捗は遅れた.
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今後の研究の推進方策 |
今回は既存の検体を使って,sCD163以外の鉄代謝にかかわる分子であるへプシジンのELISAによる測定を行ったところ,興味深いことにsCD163と反比例していた.今後はこの分子との関係も調べて行く予定である.骨髄抑制を来していない担癌患者の貧血と出血後のCD163の発現とsCD163の量およびへプシジンの関与について,相互作用を解析して行く.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外生産の試薬を購入できなかったため,国内外の学会発表はWebとなり旅費を要さなかったため,次年度使用額が生じた.今後はsCD163分子とへプシジン以外にハプトグロビンやフェリチンなどの計測を行う予定であり,その際に前年度以上に試薬が必要となるため,その購入のため次年度使用額を使用する計画である.
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