研究課題
骨髄系腫瘍では、遺伝子異常によって腫瘍化する細胞の分化段階が異なり、多彩な病型を呈する。表現型の違いは増殖性や治療反応性に影響するため、治療方法も異なる。したがって、病初期の正しい遺伝子診断が治療成績の向上に非常に重要である。骨髄系腫瘍の研究では網羅的遺伝子変異解析や発現解析が盛んに行われて数多くの知見が得られており、欧米ではクリニカルシークエンスが実装されているが、本邦では臨床実装に至っていない。本研究は、診断・治療選択に直結する骨髄系遺伝子変異解析検査法の確立を目指し、必要十分な解析対象遺伝子を絞り込んだ「骨髄系腫瘍診断検査パネル(駒込ミエロイドパネル)」を実装化して正確な診断と適切な治療選択や予後予測を可能にすることを目指している。クリニカルシークエンス症例は令和4年度に急増し、累計で900件に達した。駒込病院は造血幹細胞移植の拠点病院であり、他院で治療後に完全寛解状態で受診する症例も多いことから、初発時の骨髄塗抹標本を用いた解析の依頼が非常に増加した。また、ミエロイドパネル検査でコピー数解析により遺伝子の欠失・増幅を検出する手法を確立し、遺伝子一部増幅(PTD)や片アレル欠損・一部エクソン欠失などの病的意義を有する遺伝子異常の同定を可能にした。全症例でコピー数解析を実施し、正常核型症例の遺伝子欠失やKMT2A遺伝子のPTDの検出、染色体検査未施行例の不均衡型染色体異常検出など有用な情報を提供できている。さらに、急性リンパ性白血病(ALL)の診断・予後予測に有用な遺伝子パネル(version 3.0)を作成し、ALLや混合型白血病(MPAL)の診断に有用となっている。骨髄系パネルもいくつかの遺伝子全長をパネルに加えて解析の厚みを増し、骨髄系腫瘍の遺伝子異常によるリスク分類にも対応可能な改良版検査パネルを構築した(version 2.1)。
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