研究課題
初年度であり、造血因子の解析と非血液細胞での基礎実験を前段階として追加した。結果は以下である。1) 血液透析患者における新規の造血規定因子の探索: 2017年のデータ解析では、CRP<0.3mg/dLの症例(199例)で網赤血球数(Ret)はTGと正相関した。男性群、女性群ともにRetはTGと正相関し、その相関性は女性がより大きかった。また、Epo製剤のダルベポエチン、エポエチンペゴルの両群でもRetとTGが正相関した。アシルカルニチン(ACT)の単回帰解析ではアシル基C18:1の相関が最も強く、C18:1とZnは正相関した。ACTを含んだ重回帰分析(120例)では、log(ACT/C18:1)、logTG、女性がRetの正の独立規定因子であり、C18:1のACTが造血亢進に関連すると推測された。2016年5月~2018年2月までの22ヶ月間の集計(累積検体数4000以上)でも女性(n=1814)でのRetとTGの相関係数が大きかった。2) 血液透析患者での新規のEpo抵抗性規定因子の探索(2017年分の多変量解析): 全例(262例)ではBMI、TC、FeがEpo抵抗性と負相関し、CRPとは正相関した。男性群でも同様であった。男性群のエポエチンペゴル使用例でアディポネクチンがEpo抵抗性と正相関し、TCと負相関した。女性群ではBMI、TC、Feが負相関した。3) 造血細胞実験の前準備実験:非血液細胞であるHepG2細胞で予備実験した。臨床データでは血清のC18:1とZnが正相関したため、HepG2細胞をZnSO4(100μM)含有の増殖培地で24時間培養後に細胞内のC18:1を測定したところ、C18:1量が約50%増加していた。またZnSO4(10,100μM)刺激ではアシルアルニチン産生に関与するCPT-1αのmRNAが各々 26%、74%増加した。
2: おおむね順調に進展している
1) 血液透析患者における新規の造血規定因子の探索、2) 血液透析患者での新規のEpo抵抗性規定因子の探索:この2つの検討については2017年度の検体の解析であり、年齢、性別、身長、体重、透析歴、服薬、糖尿病の有無、透析効率、推定蛋白摂取量、Epo製剤種類・使用量、ルーチン検査[血算・生化学、Fe、TIBC、CRP、血清脂質(TC,TG, LDL-C, HDL-C)] は藤田記念病院検査部で測定されていたため迅速に情報提供された。APN、Zn、フェリチンは当院検査部で測定する環境が整備されていたため、年度内に測定が可能であった。脂質関連因子のアシルカルニチン(AC)は研究協力者に120検体を解析依頼した。以上より、概ね順調に解析ができていると考えた。3)高度Epo抵抗性患者と低度Epo抵抗性患者の検出:2020年度のデータを現在収集中であり、解析は次年度に行う予定である。4) 造血細胞実験の前準備実験:臍帯血からの赤芽球分化・増殖の実験は適切な臍帯血が得られなかったため、実施できなかった。その代替えとして、亜鉛とカルニチンを添加した非血液細胞を用いて、亜鉛濃度とアシルカルニチンならびにその関連代謝酵素であるCPT-1αとの関連性が検討できた。基礎実験としてはやや遅れている状態である。
1) 血液透析患者における新規の造血規定因子の探索、2) 血液透析患者での新規のEpo抵抗性規定因子の探索:この2つの検討については、次年度は2018年度の検体を解析する予定である。各種の診療情報は藤田記念病院検査部から提供頂く。APN、Zn、フェリチンは当院検査部で測定する環境が整備されているため、年度内に測定する予定である。脂質関連因子のアシルカルニチン(AC)は研究協力者に残りの120検体を解析頂く予定である。ビタミンB12、葉酸についても今年度に測定する。しかしながら、現在、本学の共用質量分析器が故障中であり、研究協力者の木戸口技師(当検査部)が実施予定のリン脂質(PL)、スフィンゴ脂質(SL)の測定は困難な可能性があるため、重要な検体のみ外注することを考えたい。3)高度Epo抵抗性患者と低度Epo抵抗性患者の検出:2020年度のデータを現在収集中であり、解析は次年度で行う予定である。4) 造血細胞実験:本年度は臍帯血からの赤芽球分化・増殖の実験は適切な臍帯血が得られなかったため、実施できなかった。しかし、次年度は研究分担者とより密接に連携し解析できるチャンスを高めていく予定である。
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