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2020 年度 実施状況報告書

新規Epo抵抗性因子の探索と分子機序の解明:赤芽球分化・増殖と脂質代謝の関連性

研究課題

研究課題/領域番号 20K07844
研究機関福井大学

研究代表者

木村 秀樹  福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 准教授 (20283187)

研究分担者 丹羽 明  京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点助教 (20546999)
山内 高弘  福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (90291377)
鳥居 国雄  福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 主任臨床検査技師 (40534045)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード腎性貧血 / エリスロポエチン抵抗性 / 血液透析患者 / アシルカルニチン / 血清脂質 / 亜鉛 / CPT-1α
研究実績の概要

初年度であり、造血因子の解析と非血液細胞での基礎実験を前段階として追加した。結果は以下である。
1) 血液透析患者における新規の造血規定因子の探索: 2017年のデータ解析では、CRP<0.3mg/dLの症例(199例)で網赤血球数(Ret)はTGと正相関した。男性群、女性群ともにRetはTGと正相関し、その相関性は女性がより大きかった。また、Epo製剤のダルベポエチン、エポエチンペゴルの両群でもRetとTGが正相関した。アシルカルニチン(ACT)の単回帰解析ではアシル基C18:1の相関が最も強く、C18:1とZnは正相関した。ACTを含んだ重回帰分析(120例)では、log(ACT/C18:1)、logTG、女性がRetの正の独立規定因子であり、C18:1のACTが造血亢進に関連すると推測された。2016年5月~2018年2月までの22ヶ月間の集計(累積検体数4000以上)でも女性(n=1814)でのRetとTGの相関係数が大きかった。
2) 血液透析患者での新規のEpo抵抗性規定因子の探索(2017年分の多変量解析): 全例(262例)ではBMI、TC、FeがEpo抵抗性と負相関し、CRPとは正相関した。男性群でも同様であった。男性群のエポエチンペゴル使用例でアディポネクチンがEpo抵抗性と正相関し、TCと負相関した。女性群ではBMI、TC、Feが負相関した。
3) 造血細胞実験の前準備実験:非血液細胞であるHepG2細胞で予備実験した。臨床データでは血清のC18:1とZnが正相関したため、HepG2細胞をZnSO4(100μM)含有の増殖培地で24時間培養後に細胞内のC18:1を測定したところ、C18:1量が約50%増加していた。またZnSO4(10,100μM)刺激ではアシルアルニチン産生に関与するCPT-1αのmRNAが各々 26%、74%増加した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1) 血液透析患者における新規の造血規定因子の探索、2) 血液透析患者での新規のEpo抵抗性規定因子の探索:
この2つの検討については2017年度の検体の解析であり、年齢、性別、身長、体重、透析歴、服薬、糖尿病の有無、透析効率、推定蛋白摂取量、Epo製剤種類・使用量、ルーチン検査[血算・生化学、Fe、TIBC、CRP、血清脂質(TC,TG, LDL-C, HDL-C)] は藤田記念病院検査部で測定されていたため迅速に情報提供された。APN、Zn、フェリチンは当院検査部で測定する環境が整備されていたため、年度内に測定が可能であった。脂質関連因子のアシルカルニチン(AC)は研究協力者に120検体を解析依頼した。以上より、概ね順調に解析ができていると考えた。
3)高度Epo抵抗性患者と低度Epo抵抗性患者の検出:
2020年度のデータを現在収集中であり、解析は次年度に行う予定である。
4) 造血細胞実験の前準備実験:
臍帯血からの赤芽球分化・増殖の実験は適切な臍帯血が得られなかったため、実施できなかった。その代替えとして、亜鉛とカルニチンを添加した非血液細胞を用いて、亜鉛濃度とアシルカルニチンならびにその関連代謝酵素であるCPT-1αとの関連性が検討できた。基礎実験としてはやや遅れている状態である。

今後の研究の推進方策

1) 血液透析患者における新規の造血規定因子の探索、2) 血液透析患者での新規のEpo抵抗性規定因子の探索:
この2つの検討については、次年度は2018年度の検体を解析する予定である。各種の診療情報は藤田記念病院検査部から提供頂く。APN、Zn、フェリチンは当院検査部で測定する環境が整備されているため、年度内に測定する予定である。脂質関連因子のアシルカルニチン(AC)は研究協力者に残りの120検体を解析頂く予定である。ビタミンB12、葉酸についても今年度に測定する。しかしながら、現在、本学の共用質量分析器が故障中であり、研究協力者の木戸口技師(当検査部)が実施予定のリン脂質(PL)、スフィンゴ脂質(SL)の測定は困難な可能性があるため、重要な検体のみ外注することを考えたい。
3)高度Epo抵抗性患者と低度Epo抵抗性患者の検出:
2020年度のデータを現在収集中であり、解析は次年度で行う予定である。
4) 造血細胞実験:
本年度は臍帯血からの赤芽球分化・増殖の実験は適切な臍帯血が得られなかったため、実施できなかった。しかし、次年度は研究分担者とより密接に連携し解析できるチャンスを高めていく予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] PPAR-δactivation reduces cisplatin-induced apoptosis via inhibiting p53/Bax/caspase-3 pathway without modulating autophagy in murine renal proximal tubular cells2021

    • 著者名/発表者名
      Shan J, Kimura H, Yokoi S, Kamiyama K, Imamoto T, Takeda I, Kobayashi M, Mikami D, Takahashi N, Kasuno K, Sugaya T, Iwano M.
    • 雑誌名

      Clinical and Experimental Nephrology

      巻: 25 ページ: 598-607

    • DOI

      10.1007/s10157-021-02039-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chronic hypoxia exacerbates diabetic glomerulosclerosis through mesangiolysis and podocyte injury in db/db mice2020

    • 著者名/発表者名
      Takahashi N, Yoshida H, Kimura H, Kamiyama K, Kurose T, Sugimoto H, Imura T, Yokoi S, Mikami D, Kasuno K, Kurosawa H, Hirayama Y, Naiki H, Hara M, Iwano M.
    • 雑誌名

      Nephrology Dialysis Transplantation

      巻: 35 ページ: 1678-1688

    • DOI

      10.1093/ndt/gfaa074

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Analytical and clinical validation of rapid chemiluminescence enzyme immunoassay for urinary thioredoxin, an oxidative stress-dependent early biomarker of acute kidney injury2020

    • 著者名/発表者名
      Yokoi S, Kasuno K, Nishimori K, Nishikawa S, Nishikawa Y, Morita S, Kobayashi M, Fukushima S, Mikami D, Takahashi N, Oota Y, Kimura H, Soya Y, Kimata S, Nishimura K, Ono T, Muso E, Yoshida H, Yodoi J, Iwano M.
    • 雑誌名

      Clin Chim Acta

      巻: 507 ページ: 271-279

    • DOI

      10.1016/j.cca.2020.04.025

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Short-chain fatty acid mitigates adenine-induced chronic kidney disease via FFA2 and FFA3 pathways2020

    • 著者名/発表者名
      Mikami D, Kobayashi M, Uwada J, Yazawa T, Kamiyama K, Nishimori K, Nishikawa Y, Nishikawa S, Yokoi S, Kimura H, Kimura I, Taniguchi T, Iwano M.
    • 雑誌名

      Biochim Biophys Acta Mol Cell Biol Lipids

      巻: 1865 ページ: 158666

    • DOI

      10.1016/j.bbalip.2020.158666

    • 査読あり
  • [学会発表] 血液透析患者におけるアディポネクチンの臨床規定因子解析と生命予後の検討2020

    • 著者名/発表者名
      木戸口 周平 、橋本 儀一 、川田 知恵子 、宮崎 良一 、木村 秀樹
    • 学会等名
      第60回日本臨床化学会
  • [学会発表] 血液透析患者における血中アディポネクチン濃度と生命予後の性差を含めた検討2020

    • 著者名/発表者名
      木戸口 周平 、岩村 菜々美 、鳥居 国雄 、橋本 儀一 、川田 知恵子 、宮崎 良一 、木村 秀樹
    • 学会等名
      第67回日本臨床検査医学会
  • [学会発表] ジクロロ酢酸はcFLIP発現増強と14-3-3蛋白リン酸化抑制を介してシスプラチン腎障害を軽減する2020

    • 著者名/発表者名
      上山 和子 、木戸口 周平 、岩村 菜々美 、橋本 儀一 、竹内 貴洋 、今本 徹 、武田 泉 、増永 慎也 、 岩野 正之、木村 秀樹
    • 学会等名
      第67回日本臨床検査医学会
  • [学会発表] ジクロロ酢酸はcFLIP発現増強と14-3-3蛋白リン酸化抑制を介してcaspase経路を抑制しシスプラチン腎障害を軽減する2020

    • 著者名/発表者名
      上山和子、木村秀樹、今本 徹、武田 泉、竹内貴洋、増永慎也、岩野正之
    • 学会等名
      第63回日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] 血液透析患者におけるアディポネクチンと心血管疾患発症ならびに生命予後との関連性の解析2020

    • 著者名/発表者名
      木戸口周平、今本 徹1、武田 泉、鳥居国雄、乾 菜々美、岩野正之、宮崎良一、木村秀樹
    • 学会等名
      第63回日本腎臓学会学術総会

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公開日: 2021-12-27  

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