研究実績の概要 |
我々はこれまで生理活性ペプチド、アドレノメデュリン(AM)と、その受容体活性調節タンパクRAMP2, 3による各臓器の恒常性維持機構に注目してきた。本研究は、AM-RAMP2, 3系による骨格筋の恒常性制御、サルコペニアの病態における意義について検討を行った。 C57BL/6J野生型オスマウスを用い、筋傷害薬カルディオトキシン(CTX)を前脛骨筋に筋注する事で、骨格筋傷害モデルを作成した。CTX投与3日後、AM、RAMP2、RAMP3の発現は著明に亢進し、AM-RAMP2, 3系の病態への関与が示唆された。次に、RAMP2およびRAMP3ノックアウトマウス(RAMP2+/-, RAMP3-/-)に対してCTX投与を行なうと、コントロールマウスに比較して、有意な筋重量の低下を認め、筋組織内の炎症の消退遅延、骨格筋の再生遅延、ミトコンドリア機能の低下が認められた。一方、野生型マウスに対してAMを外因性に持続投与すると、骨格筋の炎症や酸化ストレスレベルが抑制され、ミトコンドリア生合成、エネルギー代謝系の亢進が認められた。 次に、マウスの後肢を膝関節伸展位、足関節底屈位で14日間強制固定し、廃用性筋萎縮モデルを作成した。固定開放後の一過性浮腫が消退した2日目、筋重量、筋病理所見を観察したところ、RAMP2+/-、RAMP3-/-における筋重量の低下と、骨格筋細胞萎縮が確認された。 さらにマウス横紋筋由来筋芽細胞(C2C12)に対してCeramideを投与し、細胞老化誘導実験を行ったところ、AMの外因性添加によって細胞傷害が抑制されることが確認された。 以上の結果から、AM-RAMP2, 3系は、骨格筋傷害に対して抑制的に働いていることが明らかとなった。AM-RAMP2, 3系は、サルコペニアの予防、治療の新規治療標的となることが示唆される。
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