研究課題/領域番号 |
20K07849
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
樫林 哲雄 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (90403823)
|
研究分担者 |
奥谷 文乃 高知大学, 教育研究部医療学系看護学部門, 教授 (10194490)
上村 直人 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (10315004)
米田 哲也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (20305022)
数井 裕光 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (30346217)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 軽度認知障害 / アルツハイマー型認知症 / 嗅覚障害 / 統計画像解析 |
研究実績の概要 |
共同研究施設である兵庫県立リハビリテーション西播磨病院において研究計画書に記載した検査を実施した軽度認知障害(MCI)及び初期アルツハイマー型認知症(AD)合計70例に対してStatistical Parametric Mapping 8(SPM8)を用いてMRI脳容積、認知機能検査結果とT&T olfactometryを用いて評価した嗅覚検知能、嗅覚認知能の相関解析を行った。結果、嗅覚検知スコアと側坐核及び左海馬傍回と、嗅覚認知スコアと眼下前頭回、右前頭葉、右側頭葉前方部との優位な相関を認めた(p<0.001)。また、認知機能では嗅覚認知と記憶検査に相関を認めた(r=0.305, p=0.01)。この結果からは嗅覚の検出と識別の機能障害は、MCIと初期ADでは異なる領域の障害に起因しており、前者は嗅覚回路に、後者は新皮質に起因していた。前者は嗅覚回路に、後者は新皮質に起因していることが明らかとなった。また同施設において、研究計画書に記載した検査を実施したMCIと初期AD218例を対象として、SPM8を用いて脳血流シンチと嗅覚検査の相関解析を行った。結果嗅覚認知と左側頭極、嗅内野皮質、両側前頭極の血流との相関を認めた(p<0.001)。認知機能では嗅覚検知と記憶検査の相関(r = 0.193, p = 0.004)を、嗅覚認知と記憶(r = 0.408, p < 0.001)、見当識 (r = 0.292, p < 0.001) との相関を認めた。脳血流シンチはMRIで明らかとなる萎縮より早期の変化を捉えていると考えられ、これらの部位がよりMCI及びADの段階における嗅覚障害のより早期の変化の神経基盤となっている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では①MCIと初期ADにおける脳内神経基盤を明らかにする、②MCI全体とADによるMCIの嗅覚検知と認知の違いを明らかにする。③MCIの1~3年後のADへのコンバート率と初回評価の嗅覚検査との関連を明らかにすることを目的として、対象症例を高知大学医学部付属病院と兵庫県立リハビリテーション西播磨病院認知症疾患医療センターでエントリーすることを予定していた。2020年度の研究開始後、新型コロナウイルス感染症の流行により、高知県の基幹病院である高知大学医学部付属病院では、一定期間エントリーを行うことができず、今後の状況次第で認知症精査目的の入院については制限される可能性もある。当初は2021年度までの期間で50例のエントリーを、2020年度内で25例をエントリーをする予定だったが、期間内に高知大学において14症例のエントリーのエントリーにとどまった。このため、①MCIと初期ADにおける脳内神経基盤を明らかにする研究に関しては研究協力施設である兵庫県立リハビリテーション西播磨病院のデータを用いて解析を行なった。解析成果については英文誌に投稿し受理された。
|
今後の研究の推進方策 |
①MCI全体と背景にADが存在するMCIの嗅覚検知と認知の違い、②MCIの1~3年後のADへのコンバート率と初回評価の嗅覚検査との関連を明らかにすることを目的として、データの蓄積と解析を進めていく。①については高知大学でエントリーされた症例の内、ADのバイオマーカーである髄液中のリン酸化タウの値及びMRIのPADRE解析の結果、脳内にアミロイドβ蓄積が想定される対象者と想定されない非対象者の嗅覚検査を比較検討する。また②については共同研究施設であるリハビリテーション西播磨病院で初診時にT&T olfactometryを実施したMCIの対象者について3年後のADコンバート率を解析し、嗅覚検査との関連を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の報告のため、国際学会、国内学会の旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、学会が中止となったり、web開催となったため、旅費の使用を行わなかった。2021年度も同様の状況が続くと推測されることから、web会議やweb上での学会発表の必要があり、旅費の使用をweb環境整備に当てることを計画している。
|